研究課題
我々が同定、解析を進めてきている転写調節因子OASISは損傷脳の反応性アストロサイトに強発現することが以前より分かっている。OASISが損傷脳における神経再生にとってどのような役割を担っているか(再生を促進するのか或いは抑制するのか)についてはこれまでのところ明確な結論は出ていない。反応性アストロサイトからはコンドロイチン硫酸鎖で修飾された糖蛋白が多量に合成分泌され、これが神経再生を阻害することは周知の事実である。我々はOASISがこの神経再生阻害性の糖蛋白の産生分泌に関わっている可能性について本研究でOASISのノックアウトマウスを用いて検討した。まずOASISのノックアウトマウスと野生型のマウスに機械的脳損傷を加えると明らかに損傷部におけるコンドロイチン硫酸基の量が野生型の方が多い(CS-56抗体による検討)ことからOASISがコンドロイチン硫酸基の蛋白修飾過程に関わっていることが強く示唆された。次にコンドロイチン硫酸基の産生と蛋白修飾に関わる様々な遺伝子(コア蛋白遺伝子、糖転移酵素遺伝子)についてノックアウトマウスと野生型で比較したところ、糖鎖の6位にコンドロイチン硫酸を負荷する酵素であるC6ST-1が他の物に比べてノックアウトマウスで低下していることを見出した。そこで最終年度にあたって、C6ST-1の損傷脳における発現がOASISノックアウトマウスで低下していること、及び培養アストロサイトを用いたC6ST-1の転写制御メカニズムの解析を通じて、OASISがC6ST-1ゲノムの第一イントロンに位置する複数のCRE箇所に結合し、C6ST-1の転写を正に制御していることを証明した。以上のことからOASISは損傷脳における神経再生に対して再生阻害の働きを有していることが明らかとなった。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件)
Neurochem Res.
巻: 39 ページ: 59-67
10.1007/s11064-013-1190-1.
J Biol Chem.
巻: 289 ページ: 2620-2631
10.1074/jbc.M113.504787.
J Biosci Bioeng.
巻: 117 ページ: 664-669
10.1016/j.jbiosc.2013.11.015.
J Neurochem.
巻: Epub ahead ページ: Epub ahead
10.1111/jnc.12736.
PLoS One.
巻: 8 ページ: e66124
10.1371/journal.pone.0066124. Print 2013.
Cell Death Dis.
巻: 4 ページ: e700
10.1038/cddis.2013.230.