研究課題/領域番号 |
23590222
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
木村 英二 岩手医科大学, 医学部, 助教 (50405750)
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研究分担者 |
磯貝 純夫 岩手医科大学, 医学部, 准教授 (60212966)
人見 次郎 岩手医科大学, 医学部, 教授 (00218728)
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キーワード | ゼブラフィッシュ / 血管芽細胞 / 形態形成 / 分化 / 脈管形成 / 血管新生 / ETSrp / マイクロアレイ |
研究概要 |
本研究課題では、ETSrp遺伝子の発現を抑制し血管芽細胞の分化を阻害した際に発現の変動を示した466 遺伝子群の機能解析を行い、血管芽細胞が如何にして間葉系の細胞から分化していくのか、そのメカニズムの解明を目指している。そのために、in silico 解析による候補遺伝子のスクリーニングを行い、まず 遺伝子リストのうち、遺伝子のアノテーションの付いたもの(上昇:83 遺伝子、下降:154 遺伝子)に関して、ゼブラフィッシュ関連の総合データベースであるZFINを用い、これまでの発現パターンや関連文献を検索し血管系との関係が報告されているかを確認した。また研究室内のコンピューターにゼブラフィッシュやヒト、マウスの最新の遺伝子情報のデータベースを構築し、Local blastを利用して集約的に解析するシステムを構築した。これを用いて遺伝子のアノテーションが付いていないもの(上昇:108 遺伝子、下降:121 遺伝子)に関して、DNA プローブの基となったEST 配列を取得してblast解析を行い、ヒトやマウス遺伝子からオーソログなものを探索した。以上のin silico 解析を466 遺伝子に対して行い、ヒトやマウスでのホモログ遺伝子が同定され、かつ血管系との関係が報告されていないものの選定作業を行い、一方で 遺伝子の発現パターンが未報告の遺伝子に対しては、in situ hybridization法による解析を進めている。また 形態学的評価法の確立に関しては、 正常に発生の進行した胚の透過型電子顕微鏡(TEM)、KOH 消化法による走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行い、血管芽細胞の正常発生過程での形態的な変化の解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に行った in silico 解析による候補遺伝子のスクリーニングに関しては、アノテーションの付いたものに関して、ZFINから これまで報告のあるin situ hybridizationの発現パターンや関連文献からなるデータベースを構築した。このデータベースをもとに詳細な解析を進めて、脳血管芽細胞の初期分化過程に一致して発現を認める遺伝子を5つ同定することに成功し、現在 これらの機能解析の準備を進めている。また研究室内のコンピューターにゼブラフィッシュやヒト、マウスの最新の遺伝子情報のデータベースを構築し、Local blastを利用して集約的に解析するシステムの構築も完了し、ゼブラフィッシュ、マウス、そしてヒトのrefseqデータベースからオーソログ遺伝子の有無の判定が行えるようになっている。これらのin silico 解析は当初の予定よりやや時間がかかったが、順調に進行している。形態学的評価法に関しても、 正常発生した胚の観察を進めており、血管芽細胞の正常発生過程での形態的な変化をとらえつつある。平成24年度には、in silico 解析による候補遺伝子のスクリーニングを終了させ、いくつかの遺伝子に対して、in situ hybridization 法による発現部位の解析を行った。その結果、新規に動脈形成領域で特異的に発現する遺伝子(Tag-274)の同定に成功した。この遺伝子に対しては、系統樹解析を行い、ヒト・マウスでの相同遺伝子も同定した。現在 機能解析の準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、まず in silico 解析により明らかになった発現パターンが未報告の候補遺伝子を対象に、12体節期の胚を用いてin situ hybridization 法を行い、これらの遺伝子が 血管で発現しているのか、血管周囲組織なのか、あるいは間葉系細胞で発現しているのかを明らかにする。血管形成領域との関連を認めた遺伝子群に関しては、実際にETSrp の抑制で遺伝子の発現が低下しているか、real time PCR 法で再確認する。また並行して、候補遺伝子がヒト・マウスのどのような遺伝子と類縁関係にあるのかを系統樹解析により明らかにする。系統樹解析は、海外共同研究者の谷藤吾朗博士(カナダ Dalhousie 大学)が行う。全ての結果を踏まえて機能解析を行う優先順位を決定し、morpholino antisense oligo や mRNAを用いた機能解析を進めていく。機能解析実験に関しては、ETSrp の抑制で発現の上昇した血管周囲組織や間葉系の細胞で発現しているものを優先的に進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費は、主に 候補遺伝子の発現部位の特定のために行うin situ hybridization 法に関連する試薬の購入と、血管形成領域に一致した発現を示した遺伝子に対して 実際にETSrp の抑制で遺伝子の発現が変動しているか評価する real time PCR 法に関連する試薬の購入に使用する。また、これまでのスクリーニングで選定された遺伝子群の機能抑制実験のための morpholino antisense oligoの購入に使用する。形態学的な解析も並行して行うため、そのための試薬購入にも使用する。成果発表・情報収集のために、国内学会(分子生物学会・血管生物学会・小型魚類研究会)に参加する。そのための旅費にも使用する。
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