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2011 年度 実施状況報告書

フェレット大脳における脳溝形成への連合線維の役割

研究課題

研究課題/領域番号 23590223
研究機関つくば国際大学

研究代表者

澤田 和彦  つくば国際大学, 保健医療学部, 教授 (10284324)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード大脳 / 進化 / 系統発生 / voxel-based morphometry / volume rendering / MRI / DTI
研究概要

一部の哺乳動物では大脳皮質が著しく発達し、複雑な脳溝を形成する。我々はサルにおける脳溝形成の詳細を肉眼解剖的(Fukunishi et al, Anat Embryol, 2006; Kashima et al, Brain Struct Funct, 2008)およびMRI画像解剖的(Sawada et al, Brain Struct Funct, 2009)に明らかにした。更に、脳溝形成への皮質下白質線維束の関与についても明らかにした(Sawada et al, Neurosience, 2010)。本研究は、脳溝を形成する最も小型の実験動物であるフェレットを用いて、その脳溝形成に関与する連合線維を特定し、その発生・発達・有髄化に伴う脳溝の形状と脳溝周辺の皮質層構造の変化をMRI画像解剖的および免疫組織化学的に明らかにすることを目的とする。 23年度は生後4、10、21、42日齢および成獣(3ヶ月齢)の雌雄フェレット(各3~6例)を灌流固定し、取り出した大脳の脳溝・脳回の形成について肉眼解剖的に観察を行った。フェレット大脳皮質では、4日齢には既に冠状溝と上シルビウス溝吻側部が確認できた。10日齢には前シルビウス溝と十字溝がみられ、前・後S字回、冠状回、前シルビウス外回など大脳吻側半の脳回が形成された。大脳尾側半では、10日齢に偽シルビウス溝と嗅脳溝が、21日齢には上シルビウス溝尾側部と外側溝がみられ、これらの脳溝の発生により21日齢までに大脳尾側半の脳回、すなわち外側回、後シルビウス外回、シルビウス上回が形成された。以上の結果から、フェレット大脳は吻尾側方向に皮質の成熟が進み、脳溝・脳回は吻側部から順に発生することが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は、各発生段階のフェレットの大脳固定標本の採取と、その脳表の肉眼解剖的観察を行った。その結果として、フェレット大脳における脳溝・脳回形成の全貌が明らかになり、更に大脳皮質視覚野における二次溝形成の雌雄差を明らかにした。これらは平成24年3月開催の第117回日本解剖学会総会全国学術集会で既に発表済みである。更に平成24年発行の英文学術雑誌「Congenital; Anomalies」への掲載も決まっている。 肉眼解剖的観察が終了した大脳固定標本については、順次MRI計測(T1強調画像、T2強調画像、拡散強調画像の取得)を行い、既に成獣の雄1例おおよび雌4例については、大脳皮質および皮質下構造の体積の計測、FA値の計測、脳溝形成頻度(gyrification index; GI)の計測が終えている。MRI計測の結果の一部については、平成24年7月開催の第52回日本先天異常学会学術集会で発表予定である。 以上の様に初年度の目標であった大脳固定標本の採取とその肉眼解剖的観察については終了しており、その成果の公表も既にしていることから、研究計画は概ね順調に進んでいると思われる。

今後の研究の推進方策

今後は、採取した大脳固定標本のMRI計測(T1強調画像、T2強調画像、拡散強調画像の取得)を継続して行い、これらの画像を元に、(1)大脳皮質や皮質下構造の体積の計測、(2)FA値の計測、(3)gyrification indexの計測、(4)Volume-rendering法による脳溝の三次元的形状の変化、(5)T1強調シグナルとT2強調シグナルのコントラスト比から皮質下白質線維(同定した連合線維)の有髄化の評価などを行う。更にMRI計測が終了した標本については、順次凍結切片を作製していき、脳溝の底部、脳回の冠部、脳溝底と脳回冠部中間部で大脳皮質層構造のマーカー抗体(SMI-32, calbindin D-28k, calretinin, parvalbumin, NeuN, GAP43など)を用いた免疫染色を行い、各部位の皮質各層での陽性細胞数や免疫陽性強度を計測し、脳溝形成時の皮質層構造の変化を検討する。また、ミエリン塩基性蛋白の免疫染色やクリューラ・バレラ染色を行い、脳溝・脳回形成時の皮質下白質線維の有髄化を評価する。

次年度の研究費の使用計画

次年度以降は、取得した各種MRI画像の保管のためのメディア媒体や、免疫組織化学的解析に用いる各種マーカー抗体や関連試薬などの購入のため、多くを物品費(消耗品)にあてる予定である。また、MRI画像や組織切片の整理・解析など実験補助(謝金等)が必要である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Development of cerebral sulci and gyri in ferrets (Mustela putorius)2012

    • 著者名/発表者名
      Sawada K, Watanabe M
    • 雑誌名

      Congenital Anomalies (Kyoto)

      巻: 52(3) ページ: 168–175

  • [学会発表] フェレット大脳における脳溝・脳回の形成

    • 著者名/発表者名
      澤田和彦、渡邉美沙希
    • 学会等名
      第117回日本解剖学会総会全国学術集会
    • 発表場所
      山梨大学
    • 年月日
      平成24年3月26日

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公開日: 2013-07-10  

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