研究概要 |
一部の哺乳動物では大脳皮質が著しく発達し、複雑な脳溝を形成する。我々はサルにおける脳溝形成の詳細を肉眼解剖的(Fukunishi et al, Anat Embryol, 2006; Kashima et al, Brain Struct Funct, 2008)およびMRI画像解剖的(Sawada et al, Brain Struct Funct, 2009)に明らかにした。更に、脳溝形成への皮質下白質線維束の関与についても明らかにした(Sawada et al, Neurosience, 2010)。本研究は、脳溝を形成する最も小型の実験動物であるフェレットを用いて、その脳溝形成に関与する連合線維を特定し、その発生・発達・有髄化に伴う脳溝の形状と脳溝周辺の皮質層構造の変化をMRI画像解剖的および免疫組織化学的に明らかにすることを目的とする。 24年度は、成獣フェレットの大脳形態の詳細とその性差について定量的に解析した。雌雄の成獣フェレット(各5例)の脳のT1強調およびT2強調MRIを取得し、volume-rendering法により脳表の形態を三次元的に描出した。MRI画像を基に大脳の主要構造の体積を計測したところ、雄の大脳皮質と白質の体積が雌に比べて大きいことが明らかになった。T1強調画像におけるシグナル強度を半定量評価したところ、大脳の各領域において雌に比べて雄でT1シグナル強度が強いことが明らかになった。また、最大強度投影法(MIP)により、大脳の皮質領野によりT1シグナル強度が異なることがわかった。更に、T1シグナル強度が異なる皮質部位の組織切片を作製し、抗ミエリン塩基性蛋白(MBP)抗体を用いて免疫染色を行ったところ、T1シグナル強度とMBP免疫陽性反応は負の相関をもつことが明らかとなった。
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