25年度は、これまで採取したフェレット大脳の固定標本のMRI画像(T1強調画像、T2強調画像、拡散強調画像)を用いて以下の(1)~(4)について解析を行った。(1)FA値計測による皮質下白質線維発達の定量評価:雌雄の成獣フェレットの脳の拡散テンソル画像を用いてFAマップを作成し、脳溝・脳回の各領域の皮質下白質のFA値を定量した。雌雄の大脳ともに脳溝・脳回の各領域の皮質下白質のFA値は高い値を示したが、FA値の領域差および雌雄差は認められなかった。(2)sulcation index(SI)の計測: 雌雄の成獣フェレットの脳のT1強調MRI画像から脳溝を描出し、その表面積からSIを算出した。脳全体のSIは雄で0.550±0.037、雌で0.490±0.035で、雌に比べて雄で脳溝形成の頻度が高いことが明らかになった。(3)Volume-rendering法による脳溝の三次元的形状の変化:雌雄の成獣フェレットの脳のT1強調MRI画像を用いてVolume-rendering法により各脳溝を三次元再構築した。大脳の前半部の脳溝では古皮質の脳溝が雌に比べて雄で深かった。大脳の後半部では古皮質の脳溝が雄で深いのに加え、新皮質の脳溝が雄で深く、且つ雄で後方に拡張していた。(4)組織切片を用いた脳溝・脳回領域における大脳皮質層構造の差異:雌雄の成獣フェレットの大脳の組織切片を作製し、抗NeuN抗体(神経細胞のマーカー)を用いて免疫染色を行い、脳溝・脳回の各領域において皮質の神経細胞数を計測した。皮質の神経細胞数は、頭頂連合野周辺の脳溝および脳回で雌に比べて雄で多かった。 以上の結果から、フェレット大脳において脳溝形成には性差があり、特に頭頂連合野周囲での皮質の発達が雄において顕著であった。しかし、皮質下白質線維の発達の性差および脳溝・脳回の形成との関係は不明瞭であった。
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