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2013 年度 実施状況報告書

大脳皮質ニューロンでみられるネトリンー1作用の軸索伸長から分枝新生への転換の解析

研究課題

研究課題/領域番号 23590225
研究機関埼玉医科大学

研究代表者

松本 英子  埼玉医科大学, 医学部, 助教 (00312257)

キーワード神経回路形成 / 大脳皮質ニューロン / 軸索ガイダンス / 軸索分岐形成 / 軸索分枝新生 / 軸索伸長 / ネトリン-1
研究概要

本研究で注目するネトリン-1は多機能性の軸索ガイダンス因子であり、種々のニューロンにおいて軸索の伸長、反発、分枝新生などの様々な生理作用を示すことが知られる。このうち軸索伸長に関しては胎生13日 (E13) マウス由来の大脳皮質ニューロン等において多数の報告がある。一方、我々の注目してきたネトリン-1依存的な分枝新生には依然不明な点が多く、主にハムスター (胎生期:16日間) 新生仔由来の大脳皮質ニューロンで研究が進められている。これら過去の知見からは、ネトリン-1が大脳皮質ニューロンで示す生理作用が発生の過程で軸索伸長促進から軸索分枝新生促進へと転換する可能性が考えられたため、本研究でこの仮説の検証を進めている。
本年度はまずネトリン-1による刺激の際に、E14マウス由来の大脳皮質ニューロンでは軸索伸長、E16ニューロンでは軸索シャフトからの分枝新生がみられることを、光学顕微鏡画像を用いた定量的解析により確認した。次にこの軸索伸長と分枝新生の各々を担うネトリン受容体の特定を目指し、ネトリン受容体の一つDCC (deleted in colorectal cancer) に対する機能阻害抗体を培地に加えた際の影響を調べた。軸索伸長と分枝新生の程度を形態学的に定量化し比較したところ、E14ニューロンでみられる軸索伸長と、E16ニューロンでみられる分枝新生との両方で、DCCの寄与が大きいことが示された。さらに分枝新生に先立ちネトリン-1刺激直後からシャフト上で盛んになる糸状仮足形成に着目し、DCC機能阻害がこれにも影響を及ぼすことを、溶液中試料の観察が可能な新型の走査電子顕微鏡を駆使してE16ニューロンで確認した。以上のことから (1) ネトリン-1が大脳皮質ニューロンで示す生理作用は発生の進行に伴い軸索伸長促進から軸索分枝新生促進に転ずること、(2) これらはともにDCCを介して起こることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究課題は当初、平成23年度開始/平成25年度 (本年度) 終了の予定であった。ところが研究課題遂行途中の平成23年度後期に、当初の予定には無かった研究手法 (走査電子顕微鏡を用いた形態学的解析) の導入に踏み切ったために、以後の研究計画に変更が加わることとなった。この影響から平成25年度末の時点において、取得済み研究データの一部が未発表となった。そこでこれらの研究結果の整理と公表を行うために、平成26年度までの補助事業期間延長を申請し、承認された。

今後の研究の推進方策

研究計画3年目に当たる平成25年度は、主に大脳皮質ニューロン軸索でみられるネトリン-1依存的な糸状仮足形成に関する形態学的解析に取り組み前述の結果を得たが、その一部が未発表となっている。補助事業期間の延長に伴って研究計画の最終年度となる平成26年度には、これを完遂し成果を取りまとめて公表することを主たる目標とする。
さらに本研究からは、発生段階の異なる大脳皮質ニューロンでともにネトリン-1依存的に認められる軸索伸長と軸索分枝新生とが、いずれも受容体DCCを介して起こるものと考えられた。その結果、この軸索伸長と軸索分枝新生の違いをもたらすものはいったい何であるのかという疑問が、ネトリン-1の生理作用について我々が進めてきた一連の研究における、なおも未解明の課題として浮かび上がった。

次年度の研究費の使用計画

本研究課題では主に形態学的手法によって解析を進めている。当初は専ら光学顕微鏡を用いてこれを行うことを想定していたが、研究の進展につれ、本研究課題の目的を達成するためには、より高倍での観察が必要であることがわかってきた。このため課題開始時の予定を変更し、平成23年度後期より走査電子顕微鏡を活用した微細構造の形態学的解析を研究計画に組み入れた。これにより、以後の研究費使用状況に関しては当初予定との間に差異が生ずることとなり、次年度使用額が発生した。
今回生じた次年度使用額は、本年度 (平成25年度) 主に進めてきた、大脳皮質ニューロン軸索におけるネトリン-1依存的な糸状仮足形成の形態学的解析に係る研究計画を完遂し、結果を整理して発表するために用いる考えである。マウス胎仔大脳皮質より初代培養ニューロンを調製し、種々の条件下における顕微鏡観察とそれに続く画像解析を行う一連の実験操作に掛かる費用と、学会発表・論文投稿に要する経費とがこの使用計画に含まれる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Transition of the role of netrin-1 in cerebral cortical neurons during development.2013

    • 著者名/発表者名
      Hideko Matsumoto, Masabumi Nagashima
    • 雑誌名

      Mol. Biol. Cell

      巻: 24 ページ: 3775 (#1154)

    • DOI

      10.1091/mbc.E13-10-0584

  • [学会発表] Transition of the role of netrin-1 in cerebral cortical neurons during development.

    • 著者名/発表者名
      Hideko Matsumoto, Masabumi Nagashima
    • 学会等名
      The 2013 Annual Meeting of the American Society for Cell Biology
    • 発表場所
      The New Orleans Ernest N. Morial Convention Center (New Orleans, Louisiana, USA)
  • [学会発表] 大脳皮質ニューロン軸索でみられる糸状仮足生成に関する解析

    • 著者名/発表者名
      松本英子、永島雅文
    • 学会等名
      第119回日本解剖学会総会・全国学術集会
    • 発表場所
      自治医科大学キャンパス (栃木県)

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公開日: 2015-05-28  

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