ネトリン-1は多機能性の軸索ガイダンス因子であり、種々のニューロンにおいて軸索伸長、反発、軸索シャフトからの分枝新生など様々な生理作用を示す。このうち軸索伸長作用については、胎生13日 (E13) マウス由来の大脳皮質ニューロンにおける報告を含め過去に多くの研究がある。一方、分枝新生作用については未知の部分が大きいが、我々を含むいくつかのグループは、ハムスター (胎生期:16日間) 新生仔由来の大脳皮質ニューロンでネトリン-1依存的な分枝新生を認め追究してきた。一般にニューロン軸索で伸長と分枝の形成とは独立に制御されることが知られており、ネトリン-1が大脳皮質ニューロンで示す生理作用は、発生初期においては軸索伸長促進であるが、後に分枝新生促進に転ずるという仮説について、本研究で検証を行った。最終年度となる26年度は主に成果の取りまとめにあたった。 E14マウス大脳皮質に由来する培養ニューロンではネトリン-1依存的な軸索伸長、E16ニューロンではネトリン-1依存的な軸索分枝新生がみられることが、定量的画像解析よりまず明らかになった。そこでネトリン受容体の一つDCC (deleted in colorectal cancer) がこれらのニューロンに発現していることを確かめた上で、ネトリン-1依存的な軸索伸長と分枝新生の両方でDCCの寄与が大きいことを機能阻害抗体の添加により示した。 さらにE16ニューロンにおいて、ネトリン-1刺激の直後から分枝新生に先立って軸索シャフトに多数生ずる糸状仮足を、大気圧走査電子顕微鏡と呼ばれる新型の顕微鏡を用いて観察し、DCCがその生成にも寄与することを確認した。 本研究より、ネトリン-1が大脳皮質ニューロンで示す生理作用は発生の進行に伴い軸索伸長促進から軸索分枝新生促進へと転ずること、また、これらがいずれもDCCを介して起こることが示唆された。
|