研究課題
足細胞および足細胞関連細胞は多細胞動物において原尿産生装置の主要部を形成し、原尿中へのタンパク質の漏出を防いでいる。多くの動物において足細胞の基本構造は共通だが、形態や発現分子種に様々な修飾がみられる。本研究では、足細胞が作る濾過バリア構造(スリット膜)の進化・高度化の過程を構成分子種ならびに超微形態の観点から明らかにする。特に本年度は硬骨魚類におけるスリット膜構成分子に関する検討を行った。スリット膜の主要構成分子であるネフリンの局在をメダカおよびゼブラフィッシュの前腎糸球体において精査したところ、哺乳類と同様に、スリット膜が形成される以前に足細胞の腔側膜に局在が認められた。メダカでは足細胞の形成過程において、微絨毛様の突起が多数出現し、これらの先端どうしの間にスリット膜構造が認められるという特異な形態がみられた。このような構造は、ヌタウナギでは報告されているものの哺乳類では見ることがでず、原始的な脊椎動物における足細胞形成の特徴と言える。さらに、タイト結合構成分子の一種であるMpp5aがゼブラフィッシュの前腎糸球体足細胞のスリット膜部に局在することも明らかとなった(哺乳類においてMpp5がスリット膜部に局在するかどうかは分かっておらず、現在検討を進めている)。
3: やや遅れている
本年度は電子線トモグラフィー法により、スリット膜構造を明らかにする予定であったが、従来の試料作製法では像のコントラストやスリット膜構造の保持が充分でなく、撮像が困難であったため。
コンベンショナルな透過電顕法により、種々の多細胞動物におけるスリット膜構造を調査するとともに、電子線トモグラフィー法によるスリット膜構造の検討のため、染色法や固定法の検討を重ねる。
該当なし
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