研究課題/領域番号 |
23590229
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
八月朔日 泰和 山形大学, 医学部, 准教授 (00372334)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ジアシルグルセロールキナーゼ / 特異抗体 / 免疫組織化学染色 / ジアシルグリセロールリパーゼ / subsurface cistern / 免疫電子顕微鏡 / 共焦点レーザー顕微鏡 / 小脳プルキンエ細胞 |
研究概要 |
平成23年度は、脂質性二次伝達物質ジアシルグリセロール(DG)のリン酸化酵素であるジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)ファミリーのうちイプシロン型DGK (DGKε)について、ニューロンにおける詳細な神経細胞内発現および微細局在の検討を行なう目的で、確立した抗DGKε特異抗体を用い、蛍光多重染色法(共焦点レーザー顕微鏡)および免疫電子顕微鏡法により、主に小脳における発現局在解析を行なった。さらに、sn-2にアラキドン酸を有するDGを基質としてDGKεと共有する可能性のあるジアシルグリセロールリパーゼα(DGLα)とDGKεの関係を、蛍光多重染色法により検討した。 ウェスタンブロット解析において、抗DGKε特異抗体はラット全脳タンパクの推定分子量64kDa付近にバンドを検出した。共焦点レーザー顕微鏡を用いた多重染色法により、DGKεはプルキンエ細胞の細胞体、樹状突起および軸索に認められた。プルキンエ細胞におけるDGKε免疫反応の多くは、樹状突起表層部に偏在する粗大な顆粒状に認められた。またDGKε免疫反応は、イノシトール三リン酸受容体(IP3R)免疫反応と共局在を示した。次に包埋前免疫電子顕微鏡法を施行した。その結果、DGKεはプルキンエ細胞樹状突起において細胞膜直下の滑面小胞体(subsurface cistern)内部に認められた。一方、多重染色法により、DGLαはプルキンエ細胞の樹状突起表層部に数珠状構造として免疫反応が認められ、DGKε免疫反応はDGLαに隣接した深層部に検出された。 以上より、DGKεは小脳プルキンエ細胞の樹状突起において、主としてsubsurface cisternに局在し、IP3Rと密接に関連して機能すると考えられた。更にDGKεはDGLα近傍に局在し、エンドカンナビノイドである2-AG産生調節に関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究計画では、以下の項目に挙げるように、DGKεの神経細胞および下垂体前葉における発現・微細局在解析を行うことを計画した。1)野生型マウスを用いた蛍光多重染色法による解析:小脳および下垂体において共焦点レーザー顕微鏡を用いた蛍光多重染色法を施行し、DGKεの発現局在解析を行う。2)野生型マウスを用いた免疫電子顕微鏡法による解析:包埋前銀増感免疫電子顕微鏡法により、DGKεの神経細胞内微細局在解析を行う。当該年度に関して、申請者は主に小脳において多重染色法および免疫電子顕微鏡法を用い、DGKεが小脳プルキンエ細胞樹状突起のsubsurface cistern内部に局在することを明らかにすることが出来た。下垂体前葉におけるDGKεの発現および微細局在についても、各種マーカーを用いて検討を進めている。以上より、当該課題の「研究の目的」に対する達成度は、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度における次年度使用研究費が生じた主な理由として、マウス交配が予想より進まず、飼育費の減少につながったことが挙げられる。平成24年度はさらに多くのマウスペアリングを行い、滞りなく研究を遂行するよう更に留意する。また平成23年度に購入予定であったバイオフリーザーは、設置場所および電源の関係から、平成24年度に購入予定とする。 平成23年度において施行したDGKεの下垂体前葉における発現局在解析については、引き続き平成24年度も継続して施行する。
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次年度の研究費の使用計画 |
(研究計画)1-DGKεの下垂体前葉おける発現・微細局在解析:DGKεは前葉細胞の一部に発現することが明らかとなっている。DGKεがどの前葉ホルモン産生細胞に発現しているかを共焦点レーザー顕微鏡を用いた蛍光多重染色法にて解析し、DGKεの機能解明の一助とする。2-DGKβの副腎における発現局在と下垂体ドーパミン刺激実験における局在解析:1)DGKβの副腎における発現局在解析 DGKβの副腎におけるタンパクレベルでの発現および局在をウェスタンブロット法、DAB染色法、共焦点レーザー顕微鏡を用いた多重染色法にて解析する。2)ドーパミン投与による局在変化の解析 ドーパミンを野生型およびDGKβノックアウト(KO)マウスに投与し、下垂体中間葉において共局在化などDGKβおよび他の関連分子の局在に変化がないか検討する。3-特異抗体を用いたDGKβおよびDGKεのシグナル伝達複合体の解明:1)免疫沈降法→質量分析による解析 DGKβとDGKε特異抗体を用いて免疫沈降法を行ない、得られた免疫複合体に対して質量分析を行う。各KOマウスをコントロールとして用い、特異的に結合するタンパクを特定する。2)免疫沈降法→ウェスタンブロット法による解析 I型代謝型グルタミン酸受容体、AMPA型グルタミン酸受容体、シナプス後部の足場タンパク、イノシトールリン脂質代謝関連酵素等に対する抗体で、結合タンパク検出を試みる。(設備備品費および消耗品費の使用計画)設備備品については、抗血清などの試料保存のためにバイオフリーザーを、免疫沈降法による解析に使用するために多目的液相等電点電気泳動装置を購入予定である。消耗品についてはマウス購入および飼育費の増加を考慮し、適正に購入する。
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