研究課題
本研究は、脂質性二次伝達物質ジアシルグリセロール(DG)のリン酸化酵素であるジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)ファミリーのうち、神経細胞および内分泌細胞に発現し機能する可能性が高いと考えられるβ型DGK (DGKβ)とε型DGK (DGKε)について、神経細胞および内分泌細胞における微細局在の比較解析を進め、神経内分泌機能におけるDGKの生理的および病態学的役割を追求することを研究目的とした。申請者は平成23年度および24年度における研究により、DGKβ-KOマウスを用いたゴルジ鍍銀法による解析から、野生型に比してDGKβ-KOマウスの線条体投射ニュロン樹状突起における棘突起数が減少していることを明らかにした。このことはDGKβが棘突起において、細胞内シグナル分子として重要な役割を担うことを示唆するものである。また申請者はDGKεに対する特異抗体作製にも成功した。免疫組織化学染色法により、小脳においてDGKεはプルキンエ細胞樹状突起に発現すること、さらに免疫電子顕微鏡法により、DGKεが細胞内カルシウム動態に重要である細胞膜直下の滑面小胞体subsurface cisterns内、特にその膜上に局在することを明らかにした。最終年度である平成25年度においては、免疫沈降法によりDGKβとAMPA型グルタミン酸受容体のサブユニットの1つであるGluR2との結合を見出した。内分泌細胞については副腎に注目し、mRNAレベルにおいてDGKβおよびDGKεの発現を確認した。さらに免疫組織化学染色法を用いた解析により、DGKεは副腎皮質球状帯を構成する細胞の細胞膜に優位に局在する可能性を示した。以上の研究結果から、DGKβとDGKεは両者とも神経細胞および内分泌細胞における細胞膜または小胞体膜関連分子として機能し、細胞内シグナル伝達に関与する可能性が明らかになった。
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