研究課題/領域番号 |
23590230
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
依藤 宏 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00158544)
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研究分担者 |
村上 徹 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10239494)
多鹿 友喜 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90400738)
上野 仁之 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30586251)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 骨格筋 / 細胞膜裏打ち / 細胞骨格 |
研究概要 |
(1)骨格筋細胞膜裏打ち構造と細胞骨格連関の解析:正常マウスおよびジストロフィン欠損マウス(mdxマウス)について、急速凍結ディープエッチ法(QF-DE法)あるいは超薄切片法により電子顕微鏡観察をおこない、骨格筋の細胞膜裏打ちと細胞内細胞骨格との関連を調べた。正常マウスの細胞膜裏打ちをQF-DE法による金属レプリカで観察するとカベオラの間に走る直径約6,10,14,19nmにピークをもつ4種の線維状構造物が観察された。このうち14nmのものは4.2~5.4nmの横縞が見られ、アクチンフィラメントと考えられた。切片法による直径とは差があるが、これは金属蒸着によるためと思われる。Triton処理し超薄切片法で観察した標本では、正常マウスに比べmdxマウスで細胞膜と細胞内構造の間が離解する傾向がみられ、両者間の機械的連結が弱くなっていることが推測された。(2)β-シネミン欠損マウスと他の筋ジストロフィーモデルマウスの二重欠損マウスの作成:細胞骨格と膜裏打ち構造の関係を調べるため、β-シネミン欠損マウスとジストロフィン欠損マウスの交配を行ない、二重欠損マウスの作成を試みた。生まれたマウスの遺伝子型を解析したところ、二重欠損マウスが出生していることを確認できた。現在は二重欠損マウスのラインを安定させ、各組織の解析の準備を行っている。細胞骨格同士の相互連関を調べるためβ-シネミンとデスミンの二重欠損マウスの作成を検討し、ギリシャの研究室よりデスミン欠損マウスを分与してもらうことに話がついたが、ギリシャ国内の情勢不安により連絡がつかなくなり延期となっている。またβ-シネミン欠損マウスの解析を進めたところ、トレッドミルを用いた持久力テストにおいて、野生型に比べβ-シネミン欠損マウスの持久力が劣っている傾向が見られた。これによりβ-シネミンが筋原線維の安定性に寄与していることが予想された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)の骨格筋細胞膜裏打ち構造と細胞骨格連関の解析では正常マウスの解析はほぼ終了したが、そのデータを出すのに時間がかかり、ジストロフィン欠損のmdxマウスでの解析は超薄切片法ではおこなったものの、急速凍結ディープエッチ法による検討はまだ進んでいない。(2)のβ-シネミン欠損マウスと他の筋ジストロフィーモデルマウスの二重欠損マウスの作成については、ジストロフィン欠損マウスとのものは無事出生させることができたが、ラインを安定させるのに時間がかかり、まだその解析を行うところまでには進んでいない。以上の理由からやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)骨格筋細胞膜裏打ち構造と細胞骨格連関の解析:mdxマウスでの急速凍結ディープエッチ法による解析を早急に進めるとともに、(2)で作成した二重欠損マウスについてもその筋ジストロフィー症状の悪化が観察されれば解析に移る。(2)β-シネミン欠損マウスと他の筋ジストロフィーモデルマウスの二重欠損マウス:筋ジストロフィーの症状が悪化するか、血清分析での骨格筋細胞膜損傷の有無の判定などを行う。さらに、裏打ち構造と細胞骨格に影響がないかについて、免疫染色や電子顕微鏡での形態解析を行う。デスミン欠損マウスに関してはギリシャの研究室と連絡を取りつつ、営利企業からの入手も検討する。(3)ゼブラフィッシュを用いた解析:β-シネミンの過剰発現を行い、生体内での影響を調べる。またアンチセンスMorpholinoによるノックダウンや、mRNA 導入による過剰発現を用い、筋ジストロフィーモデルフィッシュの作成と、種々の遺伝子導入を同時に行い、筋ジストロフィーの治療に応用できる分子の探索を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
(2)のβ-シネミン欠損およびジストロフィン欠損の二重欠損マウスの作成・解析にあたって、作成自体は無事に進んだが、ラインの安定に予想以上に時間がかかり、その解析まで進めなかったので、解析に要すると考えていた費用、また、ギリシャから分与を受ける予定でいたデスミン欠損マウスの入手に要すると考えた費用についての出費がなかったので、次年度に使用する予定の研究費が生じた。この研究費は24年度の研究費と合わせて上欄に記した(1)mdxマウス、β-シネミンージストロフィン二重欠損マウスの細胞膜裏打ちー細胞骨格連関の電子顕微鏡的解析、(2)β-シネミンージストロフィン二重欠損マウスの病態学的・形態学的解析、および入手可能ならデスミン欠損マウスの入手に、(3)ゼブラフィッシュを用いた解析に用いる。設備は、研究室内または学内共同利用施設にすでに設置されているものを利用できるため、消耗品(急速凍結用消耗品、電子顕微鏡観察用試薬、抗体等)が経費の多くを占めている。また日本解剖学会での発表を予定しているため、国内旅費を計上している。
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