研究課題/領域番号 |
23590230
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
依藤 宏 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00158544)
|
研究分担者 |
村上 徹 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10239494)
多鹿 友喜 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90400738)
上野 仁之 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30586251)
|
キーワード | 骨格筋 / 細胞骨格 / 細胞膜裏打ち |
研究概要 |
①骨格筋細胞膜裏打ち構造と細胞骨格連関の解析:正常マウスとジストロフィン欠損マウス(mdxマウス)について、電子顕微鏡観察すると、mdxマウスでは筋原線維のM線と細胞膜裏打ちをつなぐM-cableが欠損していた。一方イムノブロティング法、蛍光抗体法ではmdxマウスでケラチン含量・染色の増強が認められ、代償が考えられた。②β-シネミン(β-Syn)及びジストロフィン(Dys)二重欠損マウスの解析: 二重欠損マウスを効率よく得るため、前年に得られた遺伝子欠損マウスを用い交配を続けた。β-Syn及びDysがヘテロザイゴートのオスと二重欠損マウスのメスを交配させたが妊娠は確認できなかった。さらにβ-Syn及びDysがヘテロのオスとβ-Syn欠損・Dysのヘテロのメス及びβ-Syn及びDysがヘテロのメスと交配させたが妊娠は確認できなかった。これによりβ-Syn-Dysの不全が生殖機能に影響する可能性が示唆された。またトレッドミルを用いた解析では、β-Syn欠損マウスの持久力の有意な低下が観察された。持久力テスト後に蛍光染色し筋原線維の状態を検討したが、野生型との違いは認められず、また基底状態で Evans blueを尾静注し筋細胞膜損傷の有無を蛍光観察したが、損傷によるEvans blueの筋線維内部への侵入も認められなかった。β-Syn欠損マウスの持久力の低下の原因は現在のところ不明である。③ゼブラフィッシュにおける解析:ゼブラフィッシュSyneminをクローニングした。これは後に公表されたSynemin BC171396と相同だった。また、マウスで知られているH,M,Sの3つのsplicing variantsのうちMに相同だった。ゼブラフィッシュ胚でin situ hybridizationを行ったところ、受精後48~72時間の心臓にSyneminが発現していた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①の骨格筋の裏打ち構造と細胞骨格連関の解析ではジストロフィン欠損のmdxマウスでの検討で、野生型マウス骨格筋と比較してM-cableが欠損している事が明らかになり、比較的順調に進行している。しかし②β-シネミンと筋疾患責任タンパクの二重欠損マウスの解析ではデスミン欠損マウスが平成23年度の段階で予定していたギリシャの研究者との共同研究がギリシャの政治的・社会的混乱から進めることができず、また商業ベースでのノックアウトマウスの利用も生きたデスミン欠損マウスは市販されておらず、ES細胞の段階での販売でノックアウトマウスの作成に多額の費用と時間がかかる事が明らかになり、時間的・資金的理由から断念せざるを得なかった。ジストロフィン欠損のmdxマウスとの二重欠損マウスについては、交配を重ね作出を試みているが、概要欄にも記したように妊娠・出産が成立せず、生殖あるいは初期発生の解析を進める必要が出てきている。またβ-シネミン欠損マウスでは筋持久力の低下が確認されたが、それとβ-シネミン欠損との関係の解析は今のところ有意なものが見つからず、やや遅れ気味である。③ゼブラフィッシュの解析では、β-シネミンは心臓での発現は確認されたが、骨格筋については今のところ発現は認められず、ゼブラフィッシュは所期の目的には使えない可能性が高い。以上のように当初の予想と異なる結果が多く出ているため、現在の達成度はやや遅れ気味と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
上記9,11に記した研究の進展をふまえ、15年度は最終年度であるので、成果として論文にまとめられる部分についてはまとめ、発表するとともに、②のβ-シネミン欠損マウスの解析を中心に進め、③のゼブラフィッシュでは確認実験をおこなう。 ①骨格筋細胞膜裏打ち構造と細胞骨格連関の解析:現在までのデータで論文作成を急ぐとともに、余裕があればケラチンの存在状態の解析、免疫沈降法による相互作用タンパクの解析をおこなう。②β-シネミン欠損マウスの解析:mdxマウスとの二重欠損マウスについては、生殖機能の低下あるいは初期発生の異常も考えられるため、精巣・卵巣・卵管におけるβ-シネミンの発現について野生型のマウスで蛍光抗体法、イムノブロット法により検討するとともに、交配に用いているバッククロスしたβ-シネミン欠損マウスの生殖腺、卵管などの異常の有無をヘマトキシリンーエオジン染色切片など形態学的に検討・解析する。初期発生の異常の有無の可能性については交配後のプラグを確認できたマウスについて経時的に開腹し、胚の光顕連続切片を作成し、異常の有無を検討する。β-シネミン欠損マウスの筋持久力低下の原因解析についてはトレッドミル負荷直後のEvans blue静注、血中クレアチンキナーゼ値測定などにより、筋細胞膜損傷の有無を検討する。また、電子顕微鏡による筋線維内の中間径フィラメントの走向、筋原線維、筋小胞体等の異常についても解析する。③ゼブラフィッシュを用いた解析:β-シネミンの骨格筋における発現の有無の確認実験をおこない、実験系としての使用の可・不可を最終決定する。骨格筋での発現が認められないことが確認された場合にはこれ以上のゼブラフィッシュを用いた実験は中止する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費の使用については、以下の費用を見込んでいる。①骨格筋細胞膜裏打ち構造と細胞骨格連関の解析では、論文作成にあたっての英文校正、投稿料等である。②β-シネミン欠損マウスの解析および③ゼブラフィッシュを用いた解析については、必要な実験設備は研究室内あるいは学内共同利用施設に既に揃っているので、抗体、mRNAのアンチセンスプローブ作成費、その他試薬、器具等の消耗品を中心として使用する予定である。それに加えて研究代表者、研究分担者の所属している群馬大学では秋から動物実験センターの改修工事が予定されており、臨時の飼育場所は用意されているが、飼養動物数を1/2に減らすことが求められている。さらには、改修後の動物実験センターには臨時の飼育場所からの直接の動物搬入はSPFの関係で認められていないので、系統維持のためにも、精子、受精卵の凍結をおこなう必要がある。このための費用、および一部飼育の外部業者への委託の費用も見込んでいる。また、研究成果発表の為の国内旅費を計上している。
|