研究課題/領域番号 |
23590233
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
本橋 力 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40334932)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 上皮-間葉系転換 / 神経堤細胞 / ES細胞 |
研究概要 |
本研究の目的は、「EMTプロセスの典型的なモデルである神経堤細胞発生を解析することによりEMT現象に関与する分子、発生メカニズムを解明する」ことである。この目的により、神経堤細胞に発現する転写因子Sox10を蛍光タンパク質で標識したES細胞とマウスを作成し、EMT現象を試験管内、生体の両面で観察できる実験系を確立している。平成23年度においては、EMT現象に関連あると思われる60個の転写因子をEMT発生時に過剰発現もしくは発現抑制した場合、どのような影響がみられるかの検討を行った。遺伝子過剰発現実験を検討したところ、レトロウィルスを用いた遺伝子の過剰発現がES細胞を使った試験管内でのEMT現象には最適であることがわかった。コントロール実験として転写因子Sox10をレトロウィルスで過剰発現したところ、試験管内でのEMT現象の亢進がみられた。遺伝子発現抑制実験の検討では、電気穿孔法でsiRNAを導入して遺伝子発現を抑制することが、試験管内でのEMT現象には最適であることがわかった。遺伝子過剰発現系および遺伝子抑制系の検討を綿密に行ったため、これら実験系を用いた遺伝子機能解析には至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ES細胞を用いたEMT現象での遺伝子過剰発現実験および遺伝子抑制実験ともに予備実験を行い、その解析方法を再検証した結果、当初考えていた実験系では候補遺伝子のEMT現象への影響を十分に観察できないことがわかった。そのため、遺伝子発現・抑制の方法を変更し、それらのタイミング、発現量の検証などの条件検討をはじめからやり直した。この検討に時間がかかり、遺伝子機能解析に至らなかった。次年度からは確立した実験系を用いて転写因子群のEMT現象での機能解析を速やかに行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
EMT現象に関連あると思われる60個の転写因子に関して、平成23年度に確立した遺伝子過剰発現および遺伝子抑制を試験管内で再現したEMT現象に行い、それら分子のEMTでの機能解析を行う。遺伝子過剰発現実験では、候補遺伝子をレトロウィルス発現系を用いてEMT現象時に過剰発現させ、その影響をフローサイトメーターで観察し、EMTでの機能を解明していく。遺伝子発現抑制においても、候補遺伝子に対するsiRNAを電気穿孔法でEMT発生時に導入して、その影響を観察することで、EMTでの機能を解析していく。これらの試験管内での影響が明らかにした後、生体由来の神経堤細胞発生現象で同様の実験を行い、候補遺伝子の機能を解析し、EMT分子メカニズムの解明につなげる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度では平成23年度に確立した実験系を駆使して、EMTに関連あると思われる候補遺伝子の機能の解析をすすめる。遺伝子抑制実験での候補遺伝子の機能の解析では、細胞への遺伝子導入システム関連物品(遺伝子導入試薬、電気的遺伝子導入機器)、候補遺伝子のsiRNA合成に経費を使用する予定である。遺伝子過剰発現実験での機能解析では、レトロウィルス発現関連試薬などを主に購入予定である。両実験に共通して細胞培養関連試薬、培地、マウス飼育費用等も計上したい。機能解析に用いるフローサイトメーター関連では、各種蛍光抗体を購入する予定である。
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