研究課題
急速凍結・凍結割断レプリカ標識(QF-FRL)法を用いた現在までの検討により,ラフトの主要因子である糖脂質のGM1およびGM3が,細胞膜外葉においてコレステロール依存性にクラスターを形成することを明らかにした.昨年度までの検討により,加圧凍結装置を駆使することで,ラット膵臓の外分泌細胞およびHuh7培養細胞において細胞内を効率良く観察できる手法が確立した.また,GFPと小胞体膜のマーカーであるチトクロームb5の膜貫通領域との融合タンパク質をパーマネントに発現する細胞を用いることにより,細胞内割断部位において小胞体を同定する方法を確立することができた.その結果,細胞膜および細胞内オルガネラにおけるイノシトール燐脂質であるPI(4,5)P2の微細分布を解析することが可能となり,PI(4,5)P2は細胞内オルガネラ膜にはほとんど局在せず,細胞膜に多く存在することが判明した.さらに細胞膜においてGup junctionにはPI(4,5)P2が周囲の領域よりも多く局在することがわかり報告した.
2: おおむね順調に進展している
平成23年度に鹿児島大学に異動したために,研究の中心となる凍結装置および凍結割断レプリカ作製装置の導入に時間がかかったために,現在までは直接的なデータをほとんど得ることが出来なかった.しかし,平成25年度にそれら装置の導入がなされたため,平成26年度では本格的に直接的なデータを得ることが可能になると考えられる.現在のところPI(4)Pを特異的に標識する方法が確立し,細胞膜および細胞内小器官での微細分布を検討している.また細胞膜内葉のラフトマーカーであるGFP-tH (H-Ras)と,その対照であるGFP-tK (K-Ras)のパーマネント細胞株の樹立出来次第,解析をすすめる予定である.
各種イノシトール燐脂質およびその他の燐脂質を含んだリポゾームからレプリカ薄膜を形成し,その標識の選択性を検討した結果,抗PI(4)P抗体が選択的にPI(4)Pを標識することが判明した.今後はこの抗体を用いて各種生体膜におけるPI(4)Pの微細局在を検討していく予定である.また,昨年度まで実施していた細胞膜内葉のラフトのマーカーであるMyrPal-mCFPおよびその対照であるGerGer-mCFPのパーマネント細胞株の樹立は出来ず,現在細胞膜内葉のラフトマーカーであるGFP-tH (H-Ras)と,その対照であるGFP-tK (K-Ras)のパーマネント細胞株の樹立を試みている.今後はこれらパーマネント細胞株を用いることにより,細胞膜外葉と内葉のラフトマーカーの相関関係を検討する.
研究初年度の平成23年度は、名古屋大学から現在の鹿児島大学に異動したこともあり、研究室の立ち上げに時間を要し研究の開始が大幅に遅れたこと、また、現在行っている実験の中心である細胞株の樹立に時間を要し、本格的な実験の開始も遅れているため。平成24年度から25年度にかけて準備を行い、機器および実験装置も整い、ようやく研究を本格的に開始できる環境が整った。また細胞株の樹立にもある程度の目処もたち平成26年度には実験を開始する予定である。未使用の研究費を使用することで研究をすすめる。
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Nature Communications
巻: 5 ページ: 3207
10.1038/ncomms4207