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2011 年度 実施状況報告書

神経ステロイドの合成と作用機構に関する組織化学的、機能形態学的解析

研究課題

研究課題/領域番号 23590236
研究機関徳島大学

研究代表者

石村 和敬  徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (90112185)

研究分担者 小野 公嗣  徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (00548597)
研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードアロマターゼ / 免疫組織化学 / 神経ステロイド / 海馬 / 卵巣摘除
研究概要

認知症は、閉経後に発症の増加がみられることからステロイドとの関連が示唆されており、治療法のひとつとしてステロイドホルモン補充療法の研究が行われている。中枢神経系では、末梢由来のステロイドとともに神経組織が独自に生合成する神経ステロイドが神経組織に対して様々な作用を発揮すると考えられている。しかし、神経ステロイドの合成制御機構やその作用機序について未だ十分な解明には至っていない。本研究は、神経ステロイドの合成および代謝に関わる諸酵素やホルモン受容体について形態学的並びに生化学的に解析を行うことにより、神経ステロイドの生理的意義を明らかにしようとするものである。 本年度は、閉経モデルラットを用いて、海馬におけるステロイドの合成および代謝に関わる諸酵素の局在とその発現動態について検討した。卵巣摘除後の時間経過とエストロゲン産生に関わる諸酵素の遺伝子発現について解析するため、術後4日、1週間、2週間のラット海馬組織から RNA を抽出して RT-PCR を行い、偽手術を施したラットと比較した。コレステロール側鎖切断酵素、3β-水酸基脱水素酵素、17α-水酸化酵素/C17-20リアーゼ、17β-水酸基脱水素酵素、およびアロマターゼについて解析した結果、コレステロール側鎖切断酵素と17β-水酸基脱水素酵素の発現は術後1週間および2週間で増加していた。3β-水酸基脱水素酵素の発現は術後1週間および2週間で減少していた。17α-水酸化酵素/C17-20リアーゼの発現に変化はなかった。アロマターゼは術後1週間で一過性の増加が認められた。さらに、閉経モデルラットに対する種々のステロイドを投与し、ステロイド合成酵素の発現がどう変動するか検索することにより、神経ステロイドの合成制御機構の解明に発展させていく計画である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

卵巣摘除後の時間経過とステロイド合成酵素の発現動態について解析を行った結果、アロマターゼをはじめとするステロイド合成酵素は影響を受けることが確認できた。さらに、卵巣摘除ラットに対してエストロゲンを投与すると、術後 1 週間にみられたアロマターゼの一過性の発現上昇が抑えられる可能性があるデータを得ている。これらのことから、アロマターゼの発現は末梢由来のエストロゲンの影響を受けていることが示唆された。今後さらにそれ以外のステロイド投与による影響について詳細に検討していく計画である。 卵巣摘除によるグルタミン酸受容体の発現動態について検索するため、特異的抗体を入手し免疫組織化学による解析に適しているかを検討している段階である。同時に、RT-PCR による生化学的解析を実施しているところである。 また、老化促進マウスである SAMP-8 マウスについても予備的な解析に着手している。いくつかの月齢のSAMP-8 マウスの海馬から RNA を抽出しアロマターゼについてRT-PCR を行っている。

今後の研究の推進方策

平成23年度に引き続いてアロマターゼを含むステロイド合成酵素、ステロイド受容体、グルタミン酸受容体の変化ならびにステロイド投与の影響を形態学的および生化学的に解析する。さらに、これらの結果に加えて行動生理学的に解析する。具体的には、ラット海馬において卵巣摘除により変動したステロイド合成酵素の発現が、アンドロゲンやエストロゲン、プロゲステロンなどのホルモン投与によりどのように変化するかを検討する。同時に、これらのステロイドホルモンの受容体の局在と発現についても検索する。 次いで、卵巣摘除ラットの海馬CA1におけるグルタミン酸受容体の発現の変化を免疫組織化学的、生化学的に検索する。卵巣摘除によるエストロゲン低下がこの部位の神経細胞にどのような影響をもたらすか、グルタミン酸受容体に焦点を当てて検索する。この過程で別の神経伝達系の関与に至る可能性もある。 卵巣摘除ラットに拘束ストレス負荷をかけ海馬の神経細胞におけるアロマターゼおよびエストロゲン受容体の発現を免疫組織化学的、生化学的に検索すると同時に、神経細胞の興奮性がどのように変化するか、グルタミン酸受容体の発現と関連づけながら追求する。また、ストレス負荷時に神経細胞に変性の兆候が現れるかどうか、エストロゲンやプロゲステロン、デヒドロエピアンドロステロン投与によって防止することが可能かどうか検証する。 また、加齢と神経ステロイド合成酵素の関連を検討するため、早期に脳の萎縮を起こす老化促進マウスの海馬CA1におけるステロイド合成酵素の存在やエストロゲン受容体について免疫組織化学的、生化学的に検索する。

次年度の研究費の使用計画

当初の計画では、次年度使用額は第117回日本解剖学会総会・全国学術集会(3月26日から28日;山梨県甲府市)で発表するための旅費として計上していた。しかし、学会会場へ向かう経路を変更したので、当初の計画より少ない旅費で学会に発表することができた。その際に生じた差額は、次年度以降の研究の進展に必要な物品のために使用した。3月31日時点で物品は発注済である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 統合失調症におけるD-アミノ酸酸化酵素の病態生理学的役割:ヒトおよびラット脳内における組織化学的発現解析2012

    • 著者名/発表者名
      小野公嗣、他
    • 雑誌名

      ビタミン

      巻: - ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [学会発表] ラット海馬における神経ステロイド合成酵素発現に対する卵巣摘除の影響2012

    • 著者名/発表者名
      小野公嗣
    • 学会等名
      第117回日本解剖学会総会・全国学術集会
    • 発表場所
      山梨大学甲府キャンパス(山梨県)
    • 年月日
      2012年3月28日
  • [学会発表] ラット海馬におけるステロイド合成酵素の発現は卵巣摘除により変動する2011

    • 著者名/発表者名
      小野公嗣
    • 学会等名
      日本解剖学会 第66回中国・四国支部学術集会
    • 発表場所
      徳島大学蔵本キャンパス(徳島県)
    • 年月日
      2011年11月13日

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公開日: 2013-07-10  

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