研究課題
胃酸分泌に与る胃底腺壁細胞が生理的条件の変化に応じて示す著明な膜動態と形態変化については近年の研究進展によって新たな重要課題が生まれ、その解明は消化機構の研究基盤提出はもとより、臨床における胃粘膜傷害の予防や治療に繋がるものと期待されている。本研究は独自に開発したラット単離胃粘膜モデルの生理的条件を振り分け、微細形態と生体物質の保持に卓越した能力を示す高圧凍結技法による試料作製を遂行し、胃底腺壁細胞の膜動態やイオンチャネルの細胞内局在を可視化する形態学的アプローチにより追求するもので、プロトンポンプ阻害剤に代わる新たな胃酸分泌抑制薬の創薬ターゲットの探索も視野に入れた研究を目的とする。平成24年度は、ラットに摂食刺激を加えた胃酸分泌期と、胃酸分泌抑制剤を投与した胃酸分泌休止期における胃底腺壁細胞の細胞膜動態について、高圧凍結技法により作製した電子顕微鏡観察試料をもとに超微形態学的解析を前年度に引き続いて推進した。さらに胃底腺壁細胞の細胞膜動態に関わるTRIM50の細胞内局在変化を探索し、TRIM50ノックアウトマウスにおける機能形態解析について、電子顕微鏡レベルの詳細な解析を行い、論文報告した。
2: おおむね順調に進展している
生体ラット胃底腺壁細胞の胃酸分泌期と休止期における細胞膜動態と胃酸分泌関連蛋白の局在解析を進め、特に細胞膜動態に関わるTRIM50の機能解析を果たし、平成24年度当初の目的は概ね達成された。
この2年間で収集された所見をもとに、ラット単離胃粘膜モデルの生理的条件を振り分け、胃底腺壁細胞が摂食後の胃酸分泌刺激状態か ら次の食餌に備えて休止状態に至る全ての生理的条件下における細胞膜動態と胃酸分泌関連蛋白の細胞内局在解析を進める。
高圧凍結実験の遂行に必要な液体窒素や、免疫組織化学的解析で使用する抗体をはじめとする消耗品・実験試薬の購入、ならびに研究打合せと学会発表に要する旅費などに使用する計画である。
すべて 2012
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Journal of Biological Chemistry
巻: 287 ページ: 33523-33532