研究概要 |
胃酸分泌に与る胃底腺壁細胞が生理的条件の変化に応じて示す著明な膜動態と形態変化については、近年の研究進展によって新たな重要課題が生まれ、その解明は消化機構の研究基盤提出はもとより、臨床における胃粘膜傷害の予防や治療に繋がるものと期待されている。本研究は独自に開発したラット単離胃粘膜モデルの生理的条件を振り分け、微細形態と生体物質の保持に卓越した能力を示す高圧凍結技法による試料作製を遂行し、胃底腺壁細胞の膜動態やイオンチャネルの細胞内局在を可視化する形態学的アプローチにより追求するもので、プロトンポンプ阻害剤に代わる新たな胃酸分泌抑制薬の創薬ターゲットの探索も視野に入れた研究を目的として遂行された。 本研究期間においては、ラットに摂食刺激を加えた「胃酸分泌期」と、胃酸分泌抑制剤を投与した「胃酸分泌休止期」における胃底腺壁細胞の細胞膜動態について、高圧凍結技法により作製した電子顕微鏡観察試料をもとに超微形態学的解析を加えた。さらに細胞膜動態に関わるsynt axin3, VAMP8, Hip1r等の細胞内局在の変化を探索し、本研究の基盤となる形態学的所見を収集するとともに、胃酸分泌への関与が示唆されるKCNQ1などのイオンチャネルの胃酸分泌期と休止期における細胞内局在について、免疫組織化学的手法による電子顕微鏡レベルの詳細な解析を行った。 さらに、胃底腺壁細胞の細胞膜動態に関わるオートファジーの関与を探索し、胃小窩壁細胞特有の機能形態解析結果について、学会シンポジウムにて報告した。
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