研究課題/領域番号 |
23590241
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 洋一 岩手医科大学, 医学部, 教授 (40118253)
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研究分担者 |
齋野 朝幸 岩手医科大学, 医学部, 准教授 (40305991)
東尾 浩典 岩手医科大学, 公私立大学の部局等, 講師 (50342837)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 脂肪酸エチルエステル / 細胞内カルシウム濃度 / 膵腺房細胞 / 血球 / マスト細胞 / 細胞死イメージング |
研究概要 |
アルコール飲酒に伴い、体内では各種の脂肪酸エチルエステル(FAEEs)が生成される。最近になり膵腺房細胞や血球細胞では、FAEEsによって細胞内情報伝達系の乱れが引き起こされると報告されてきた。これまでの報告からすると、FAEEsが何らかの機序を介して[Ca2+]i動態などの細胞内情報伝達系を乱していることから、FAEEsに対する反応を各種細胞・臓器で比較検討した。平成23年度は、各種FAEEsが血球系と外分泌系の各種細胞に及ぼす効果を、[Ca2+]i変動あるいは細胞死の有無で判定した。ラットから膵臓腺房および腹腔内単核球、肥満細胞の標本を作成し、各種FAEEsを10-7~10-4Mの濃度で作用させた。その結果、先行研究の報告で効果があるとされていたPalmitoleic Acid Ethyl Esterは膵臓の[Ca2+]i 変動をきたさなかった。またOleic Acid Ethyl Esterも幾分の上昇をみたものの、さほど明瞭な変動ではなかった。しかしながら、エチジウムホモダイマーによる細胞死イメージングでは死に至る細胞が多くみられた。Ca2+イメージング法では、観察対象細胞が限られるため、反応した細胞を見落としている可能性が高い。また、膵腺房の形がきちんと保たれている正常な腺房では変化がほとんど無いのに対し、腺房分離処理中に傷害をうけて腺房の形が歪になった標本ほど、FAEEsによる細胞死は顕著にみられた。血球系の細胞では、Palmitoleic Acid Ethyl Esterで一部の単核細胞で急激な[Ca2+]i変動を引き起こしたが、マスト細胞にはほとんど効果がなかった。エチジウムホモダイマーによる細胞死イメージングの結果もほぼ同様であった。先行研究に比べて反応が弱かったのは、FAEEsが灌流液中のBSAと結合したせいかもしれない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新研究室への移転が予定されていたため、それにあわせて実験計画を立案していたものの、震災に伴い、引っ越し業務が遅れた。あわせて物品調達も思うに任せなかった。震災に伴い、教育カリキュラムの遅れも影響した。 試薬の変更(通常BSAから精製BSAへ)がおきたため、当初予定していた網羅的解析ができなかった。ただし、卒業研究で来室した学生の助力を受け、血管標本の作成は予定通りできた。
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今後の研究の推進方策 |
1) 予定していた血管平滑筋(動脈、細動脈、静脈)の標本を作製する。2) 血管平滑筋や内皮、筋上皮細胞に対するFAEEsの効果を見る。次いで[Ca2+]i変動観察後にアクチン線維を蛍光標識ファロイジンで染色する。3) [Ca2+]i変動が如何なる機転によるものか(InfluxかMobilizationか、あるいは除去系の破綻か)を判定する4) [Ca2+]i 変動が見られた細胞の種類を同定する。【腹腔単核球や末梢血白血球】グリッドで位置決めがなされやすいカバーグラス上に細胞を播種し、[Ca2+]i変動観察後に、CD4, CD8, CD14等の細胞膜表面マーカーによる免疫組織化学的な同定やギムザ染色を施す。当該細胞の細胞周期もFucciで同定する。5) [Ca2+]i 変動が、既設のRCMで測定できないくらい速い場合、3次元的な広がりを示すことが予想される場合、あるいは超微のバイオイメージングが要求される場合(例 腺房内での細胞間Ca2+ wave、PC12の開口放出等)、新規購入したYokokawa CSU-Xで観察する。6) 細胞内情報伝達系の乱れを生化学的に検証する(例:各種リン酸化特異的抗体を用いたWestern blot, Caspaseの逸脱など)。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品:蛍光試薬、細胞周期同定用抗体、細胞種同定用抗体、培養用試薬と器具、画像情報保存用メディア(ハードディスク、シリコンディスク)旅費:アメリカ サンフランシスコ(北米細胞生物学会)成果発表と情報収集のため、京都(国際組織細胞化学会議)同前その他:英文校閲料、論文掲載料
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