研究課題/領域番号 |
23590242
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
伊藤 雅彦 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (70270486)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 腎臓 / 糸球体 / 足細胞 / スリット膜 / ZO-1 |
研究概要 |
本研究は、生体ホメオスタシス維持に必須な腎糸球体濾過装置の分子制御機構について新たな知見を獲得するため、最近作製に成功したfloxed ZO-1, floxed ZO-2マウスを利用して足突起・スリット膜の形成・維持そして障害のメカニズムについてin vivo, in vitro両面から解析を行うものである。この目的のため、まず当該年度において、糸球体足細胞特異的にZO-1, ZO-2を欠損するマウスの作製に取り組んだ。腎臓の足細胞特異的にCreリコンビナーゼを発現するNephrin-Creトランスジェニックマウスを東海大学・松阪先生より分与頂き、floxed ZO-1, floxed ZO-2マウスと交配した結果、現在までに各々数匹ずつ目的とする個体の作製に成功している。両ノックアウトマウスともに発生・出生に異常なく、出生直後に死亡する様子も観察されなかった。ZO-2ノックアウトマウスについては、約8週を経過した時点においてコントロールマウスと同程度の成長を示し、腎臓組織にも異常を認めていない。一方で、ZO-1ノックアウトマウスに関しては3匹中1匹が約4週で死亡し、解剖の結果、腎臓の組織構築全体はおよそ正常に保たれていたものの、散発性の糸球体硬化ならびにタンパク円柱の存在が認められた。この表現系は、巣状分節性糸球体硬化症と呼ばれる疾患症状に近似したものと考えている。現在、電子顕微鏡を用いた微小形態解析を進めており、上記疾患との類似性についてより詳しく検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題採択の後に、、腎臓の足細胞特異的にCreリコンビナーゼを発現するトランスジェニックマウスNephrin-Creの分与を東海大学・松阪先生に御願いし、快諾を頂く事ができた。分与頂いたマウスに他の遺伝子変異が存在したため、これを除く上で予定よりも時間を要したが、目的とする足細胞においてZO-1およびZO-2を欠失した腎臓を持つマウスを現時点で得ることが出来ており、おおむね順調に進んでいると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られている個体数が各々3匹程度と少数であるため、引き続き交配を行って目的とするマウスを作製していく。得られた変異マウスの血液・尿を経時的に採取し、コントロールマウスに比較して生体内で異常を生じていないか検討する。状況に応じてマウスを解剖し、組織切片を作製して形態解析ならびに電子顕微鏡を用いて微小形態解析を行う。また、他の足細胞構成分子の発現・局在に影響を及ぼしていないか、免疫学的な手法にて検討する。さらに、コントロールマウスおよびノックアウトマウスから足細胞を単離して初代培養を行う。これにより、足突起・スリット膜の形態・機能変化においてZO分子と因果関係を持つ可能性がある分子・経路の作用について詳しい解析が可能になると思われる。
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次年度の研究費の使用計画 |
マウスの繁殖・交配など飼育におよそ月4-5万円を必要とする。形態解析に用いる試薬や消耗品、電子顕微鏡解析の委託費などに加え、免疫学的な解析な解析に使用する抗体類が必要となる。また、血液・尿の生化学的な検査を行うための試薬類も購入予定である。その他、足細胞を初代培養するための培養器具・試薬が必要となる。
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