研究課題/領域番号 |
23590243
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
門谷 裕一 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (10185887)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 細胞運動 / ライブイメージング / 細胞骨格 / 分枝形態形成 / 唾液腺 |
研究概要 |
1)唾液腺上皮系細胞の挙動を記録したムービーからの、細胞形態の客観的定量的な評価法の開発各阻害剤存在条件下やコントロールとして作製した阻害剤非存在下での分枝形態形成過程における唾液腺上皮系細胞の挙動を記録したムービーに画像処理を行い、各時点での特徴点を抽出・計測し、これらを経時的変化としてグラフ化することを試みた。ImageJプログラムを基に、画像からの抽出法を各種比較した。当初は、画像の2値化ののち、動画の全般にわたっての特徴点の抽出を自動で実施するシステムを目指したが、実際の動画では、個々の場面における明るさの変動が予想以上に大きく、これを断念せざるを得なかった。そこで、動画からの特徴点の抽出作業をマニュアルで実施するように改変し、半自動であるが細胞形態を客観的定量的に示すことに成功した。2)分枝形態形成に関わる分子メカニズムの解明モーター分子であるミオシンに焦点を絞り、米国NIHによるデータベースSGMAP (sgmap.nidcr.nih.gov/sgmap/sgexp.html)から、発生期顎下腺での各種ミオシン分子の分布様式を調査した。それに基づき、形態形成時に興味深い発現様式をとる非筋ミオシを5種類(ミオシン-IA、-IIA,-IIB, -VI、-XVIIIBを選び、それぞれの詳細を免役組織化学により調べた。これらのうちミオシン-IIAと-IIBが発生期の顎下腺上皮細胞で高発現していることを突き止めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
〈1〉23年度研究計画(1)では、基底膜ラミニン分子に由来する種々の機能ぺプチド配列が上皮分枝形態形成の異常を引き起こす過程をEPTTL法で明らかにする予定であったが、ペプチドを作用させる条件(無血清培養法)とEPTTL法として確立してきた条件(10%牛胎仔血清添加法)とが異なり、データを得るにはいたらなかった。〈2〉研究計画(2)に基づき、細胞内モーター分子のミオシンに注目して唾液腺細胞の運動に関わる機構を検討し、唾液腺上皮系細胞に発現するミオシンアイソフォームに付いての知見を得ることができた。〈3〉EPTTL法により得られた動画から、唾液腺上皮系細胞の挙動を客観的定量的に表現する手法を開発した
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今後の研究の推進方策 |
〈1〉EPTTL法により得られた動画から、細胞形態が時間的に変化する様子を客観的定量的に表現する手法を開発できたので、これを駆使して、各阻害剤存在条件下での分枝形態形成過程における唾液腺上皮系細胞の挙動を比較することとする。阻害剤としては、当初念頭に置いたラミニン機能ペプチドにこだわらず、これらの細胞外基質シグナルの下流にある各段階の阻害剤、ことにアクチン細胞骨格系の各阻害剤:1)ROCK阻害剤(Y-27632)、2)ミオシンII阻害剤(ブレビスタチン)、3)アクチン脱重合剤(カリキュリンA)、4)アクチン重合阻害剤(サイトカラシン)についての検討を開始するものとする。〈2〉23年度研究計画(2)についてはミオシン以外の未検討成分や、微細構造レベルでの解析を継続する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ラミニン機能ペプチドを用いた阻害実験がうまく働かず、平成23年度購入予定の電動マニピュレーターとマイクロフォージの購入を見合わせた。23年度交付分のうち次年度使用額と24年度交付研究費は、実験動物の購入(500,000)、試薬(300,000)、培養用試薬(300,000)、培養用プラスチック皿などの実験器具(200,000)、ガラス機具(100,000)、成果発表のための国内旅費(100,000)、成果発表のための海外旅費(200,000)として使用する予定である。
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