研究課題/領域番号 |
23590243
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
門谷 裕一 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (10185887)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | フォーカルアドヒージョン / 細胞骨格 / 分枝形態形成 / 顎下腺 |
研究実績の概要 |
平成26年度の研究推進方策に基づき、フォーカルアドヒージョン(FA)関連分子の役割を胎生13日マウス顎下腺(E13SMG)の器官培養系と同分離上皮の単層培養系とで検討した。 E13SMG器官培養系にFAキナーゼ阻害剤(PF 573228, 以下PF)を添加したところ、分枝形態形成は強力に抑制され、この効果は非筋ミオシンⅡ(NMⅡ)阻害剤のブレビスタチン(以下Bleb)同様上皮組織への直接の作用であることが分離顎下腺上皮のマトリゲル包埋培養系で証明できた。ところが、タイムラプスムービー観察によりPFによる阻害の詳細をBlebのそれ(平成25年度報告)と比較したところ、分枝形態形成に際しての個々の唾液腺上皮細胞の移動がBleb処理では継続して認められたのに対して、PF処理ではこれが著しく減弱した。 E13SMG単層培養系では、顎下腺上皮の隣接細胞との境界とFAに一致してFAキナーゼ(FAK)とビンキュリン(Vin)が局在するが、Bleb処理ではFAでのFAKとVinが、またPF処理では隣接部でのFAKとVinの分布が減弱する傾向を認めた。 これらの結果は、NMⅡはFA形成に関わるものの、FA成分の主要なシグナル分子であるFAKとは異なった機構で上皮分枝形態形成と関わる可能性を示している。 単層培養系でのPFとBlebによる検討を踏まえて、器官培養でFAKとVinの局在様式への両阻害剤の効果を詳細に解析しようと計画した。ところが、器官培養の調子が突然不調となり、対応に手間取ったので、26年度中には検討ができなかった(延長申請承認済み)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画に加えて、平成26年度は細胞内のシグナル伝達の役割を胎生13日マウス顎下腺(E13SMG)の器官培養系と同分離上皮の単層培養系とで検討した。具体的には、E13SMG器官培養系にFAキナーゼ阻害剤(PF 573228, 以下PF)を添加したところ、これがブレビスタチン(Bleb)とは異なった様式で、E13SMG上皮細胞分枝形態形成を阻害することを発見した。同時にE13SMG上皮細胞の単層培養系では、PF処理は隣接細胞間に分布するFAキナーゼ(FAK)とビンキュリン(Vin)を減じさせること、これと異なり、Bleb処理によりFAでのFAKとVinが失われるという知見も得られており、分枝形態形成が進行しつつある顎下腺組織でのFAKやVinの分布、並びにそれぞれに及ぼすPFとBlebの効果に興味が持たれた。これらの詳細の検討は、器官培養の調子が突然不調となるアクシデントのため26年度中での実施が不可能となってしまった。当初の計画には含まれなかった新知見が得られつつあるものの、その詳細な検討が27年度に持ち越されたため、全体としての達成度は「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
研究補助期間を平成27年度までと変更し、フォーカルアドヒージョン関連分子(フォーカルアドヒージョンキナーゼとビンキュリン)の培養唾液腺原基での局在をホールマウント蛍光抗体法を用いて調査する。これにより、上皮分枝形態形成における非筋ミオシンⅡとフォーカルアドヒージョンそれぞれの役割がより明瞭になるはずで、従来の結果とも総合して原著論文の執筆と学会発表を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ホールマウント蛍光抗体法で培養唾液腺のにおけるフォーカルアドヒージョン関連分子の局在を調査しようとしたところ、器官培養のシステムが突然不調となり、その対応に4ヶ月ほどかけざるを得ない状況となった。このため、予定した研究の一部が遂行できず、抗体の購入費用や論文の執筆、学会発表にかかる経費に未使用額が生ずることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究期間を平成27年度までとし、フォーカルアドヒージョン関連分子(フォーカルアドヒージョンキナーゼとビンキュリン)の培養唾液腺原基での局在をホールマウント蛍光抗体法を用いて調査する。これにより、上皮分枝形態形成における非筋ミオシンⅡとフォーカルアドヒージョンそれぞれの役割がより明瞭になるはずで、従来の結果とも総合して原著論文の執筆と学会発表を実施する。未使用額はこれらに際しての特異抗体の購入費、論文投稿費、学会参加費並びに参加旅費にあてることとする。
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