宿主と移植した組織との間に血流が速やかに開通することは移植の成否に関わる重要な条件である。本研究において我々は、最新の再生医療工学技術を用いて作製された立体的人工組織である積層化細胞シートを移植組織のモデルとして、宿主との間の血流開通機構の解明を目指した細胞学的検索を行なってきた。これまでの研究において、細胞シート移植後12時間以内に細胞シートと宿主を結ぶ吻合血管が形成されることを我々は観察しているが、平成26年度の研究では、この吻合血管壁に分布する周皮細胞が基底膜成分IV型コラーゲンの形成に関わる分子シャペロンHSP47(Heat Shock Protein 47)を発現することを免疫組織化学的に追跡し、これらの周皮細胞が基底膜成分を産生して血管内皮細胞に足場を提供することで吻合血管の形成を促進する可能性を明らかにした。また、移植前の培養段階では細胞シート中に血管内皮細胞による管状の血管様構造が形成されるが、培養液中にPDGFB-PDGFRβ経路の遮断薬AG1295を添加することにより血管様構造の形成が阻害されることを観察し、移植前の細胞シートにおける血管形成にも周皮細胞が重要な機能を持つ事を併せて明らかにした。
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