研究課題/領域番号 |
23590248
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
長野 護 近畿大学, 医学部, 講師 (80155960)
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研究分担者 |
鯉沼 聡 近畿大学, 医学部, 助教 (10340770)
升本 宏平 近畿大学, 医学部, 助教 (60580529)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 視交叉上核 / 概日リズム / ゲート / Per1遺伝子 / cfos遺伝子 / 同調 |
研究概要 |
視交叉上核(SCN)は網膜から直接投射する腹外側部(VLSCN)と投射のない背内側部(DMSCN)に分けられ、これらが強固に同期している。しかし、SCN組織切片の長期間培養で、振動の減衰が観察され、薬物添加による再同調では振動が回復することから細胞間の脱同期の結果と考えられる。そこで、Per2::lucラットのSCN組織培養を作製し、CCDカメラによって各領域の周期変化を追跡し、細胞間がどのように脱同期するかを観察した。その結果、切片作製数日後において周期が大きく異なる細胞が現れ、このときDMSCNの最背側部では24時間よりも短い周期の細胞が、また VLSCNでは24時間よりも長周期の細胞が存在することが明らかとなった。 つぎに、光によって体内時計中枢であるSCNの概日リズムがシフトする。この際、主観的夜の光照射はシフトを生じ、SCNでのcfos, Per1遺伝子の誘導を伴う。一方、主観的昼の光照射に対して体内時計位相は変化せずcfos, Per1も誘導されない。このように光入力があってもSCNがシフトしない機構をゲートと呼ぶ。そこで、このゲートの位相を規定しているのがSCNのDMSCNかVLSCNかを検討した。ラットの明暗サイクルを変化させて強制的にSCNに脱同期を生じさせた後、光によるSCNにおけるcfos、Per1遺伝子の誘導を経時的に観察し、VLSCNとDMSCNのいずれにゲート位相が一致するかを検討した。その結果、明暗サイクルをシフト後、DMSCNにおけるPer1遺伝子発現サイクルの位相は1日約2時間位相変位した。また、光によるVLSCNでのcfos遺伝子発現誘導も同様な位相変位を示した。このことから、SCNのDMSCNがゲートの位相を規定していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動物や装置の使用数不足から微弱発光測定装置による小領域に分離した視交叉上核のスライス培養の薬剤応答領域の検証実験がすこし遅れ気味である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度にDigoxigenin-in situ hybridization(ISH)法において、発色条件の検討を試み従来よりも非特異的反応が減弱されるなどの改善を行った。これにより免疫染色との2重染色時の陽性反応の同定などが容易になってきた。さらなる改善を試みながら、ラット視交叉上核におけるリガンド及び受容体遺伝子発現細胞の経時的な局在や共存関係の検索を速やかに進めていく。また、微弱発光測定装置の使用数を増やし視交叉上核のスライス培養実験の頻度を増やしていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
遺伝子やタンパク発現の検索のための分子生物学的研究に使用する試薬や実験動物および飼料代や電子顕微鏡観察関連の用品のための費用と培養実験用品の購入費用に使用する。なお繰越金は、実験用動物および飼料の購入や培養実験用品の購入に用いる。
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