研究課題/領域番号 |
23590249
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
稲井 哲一朗 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (00264044)
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研究分担者 |
廣瀬 英司 明治国際医療大学, 医学教育研究センター, 准教授 (40380620)
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キーワード | タイト結合 / クローディン / 細胞間透過性 / trans-interaction |
研究概要 |
タイト結合構成膜蛋白claudin (cldn) は4回膜貫通蛋白で2つの細胞外ループECL1とECL2を持ち、trans-interactionにより対合する。約30種あるcldn蛋白ファミリーには、対合できないcldnの組み合わせがあり、細胞の癌化でcldnの発現パターンが変化し、癌の予後と関連すると言われている。癌化によって対合できないcldnの比率が増加して、タイト結合の細胞間透過性が亢進することが原因として考えられる。cldn-10には10aと10bという2種のisoformがある。両者のアミノ酸を比較すると、ECL1が第二膜貫通領域に移行する直前までは両者のアミノ酸配列は異なるが、それ以後のアミノ酸配列は全く同じである。そこで、cldn-10aと-10bを使ってタイト結合の形態、機能、cldn分子間の相互作用の違いを解析して、ECL1, ECL2の機能を調べることができると考えている。 緑色蛍光蛋白(EGFP)または赤色蛍光蛋白(RFP)をN末端に付与した融合蛋白RFP-cldn-1, RFP-cldn-10b, EGFP-cldn-10aまたはEGFP-cldn-10bを安定に発現するHEK細胞を作成した。これらの細胞を①EGFP-cldn-10aとRFP-cldn-1、②EGFP-cldn-10bとRFP-cldn-1、③EGFP-cldn-10aとRFP-cldn-10bの組み合わせで共培養し、局在を共焦点レーザー顕微鏡で調べた。①と②では、同種細胞間にはそれぞれのcldnの局在が見られたが、異種細胞間にはいずれのcldnも存在しなかった。しかし、③では同種細胞間にはそれぞれのcldnの局在が見られ、なおかつ、異種細胞間にもそれぞれのcldnが局在した。このことからtrans-interactionにECL2が関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
タイト結合の形態については、EGFP-cldn-10aを発現するHEK細胞を用いて、タイト結合の膜内粒子の付着様式(P面付着型、E面付着型など)をフリーズフラクチャー法調べた。その結果、少量のP面付着型のタイト結合が見られた。しかし、共焦点レーザー顕微鏡では十分な発現が見られたにもかかわらず、ストランドの数が極端に少ないので、EGFP-cldn-10aを発現するHEK細胞を再度作成し、別のクローンでも同様の結果が得られるかを確かめる必要があり、現在、安定発現細胞を再度作成中である。なお、cldn-10bはP面とE面の両者に膜内粒子が付着する型のタイト結合を形成した。 タイト結合の機能(細胞間透過性)については、高いTER (transepithelial electrical resistance)値を示すMDCK I細胞および低いTER値を示すMDCK II細胞でEGFP-cldn-10aまたはEGFP-cldn-10bを発現してTERを解析する予定であった。しかし、MDCK I細胞におけるEGFP-cldn-10aの発現が安定せず、研究計画がやや遅れている。EGFP-cldn-10aおよびEGFP-cldn-10bをMDCK II細胞で発現してTERを解析した結果が最近報告されたので、MDCK II細胞における解析は中止し、MDCK I細胞における解析だけを続行する。 cldn分子間の相互作用については、「研究実績の概要」で述べたように平成24年度で解析を終了した。
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今後の研究の推進方策 |
HEK293細胞によるタイト結合の形態の再解析:EGFP-cldn-10aを発現するHEK細胞を再度作成して、フリーズフラクチャー法でタイト結合の形態を解析する。平成24年度にEGFP-cldn-10aを発現するHEK細胞をフリーズフラクチャーで解析して、EGFP-cldn-10aがP面付着型タイト結合を形成すると思われるデータを得た。しかし、タイト結合の出現数がEGFP-cldn-10aの発現と比べてかなり少ないので、EGFP-cldn-10aを発現する細胞を再度作成して、別のクローンで再確認する必要がある。 MDCK I細胞での細胞間透過性の解析:MDCK I細胞でEGFP-cldn-10aを安定に発現する細胞を平成24年度中に得られなかったので、再度作成して細胞間透過性の指標の一つであるTERを調べる。 平成24年度までに得られたtrans-interactionの解析結果と合わせて、claudin-10のECL1のアミノ酸配列の違いが、タイト結合の形態、機能(細胞間透過性)、cldn分子間の相互作用にどのような影響を及ぼすかについての結果をまとめ、ECL1の機能を考察して論文を発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究経費(直接経費)は、1,700,000円を予定している。①物品費は、培養器具、試薬、抗体、消耗品などで1,200,000円を計上する。②旅費は、研究成果を学会で発表するための旅費として200,000円を計上する、③人件費・謝金は、論文校閲費として100,000円を計上する、④その他は、研究成果の発表のための論文投稿料、別刷りの費用、印刷費、データの保存のためのメディアなどで200,000円を計上する。
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