研究概要 |
タイト結合構成膜蛋白claudin (cldn) は4回膜貫通蛋白で2つの細胞外ループECL1とECL2を持ち、trans-interactionにより対合する。約30種あるcldn蛋白ファミリーには、対合できないcldnの組み合わせがあり、細胞の癌化でcldnの発現パターンが変化し、癌の予後と関連すると言われている。癌化によって対合できないcldnの比率が増加して、タイト結合の細胞間透過性が亢進することが原因として考えられる。cldn-10には10aと10bという2種のisoformがある。両者のアミノ酸を比較すると、ECL1が第二膜貫通領域に移行する直前までは両者のアミノ酸配列は異なるが、それ以後のアミノ酸配列は全く同じである。そこで、cldn-10aと-10bを使ってタイト結合の形態、機能、cldn分子間の相互作用を調べた。 融合蛋白RFP-cldn-1, RFP-cldn-10b, EGFP-cldn-10aまたはEGFP-cldn-10bを安定に発現するHEK細胞を作成した。これらの細胞を①EGFP-cldn-10aとRFP-cldn-1、②EGFP-cldn-10bとRFP-cldn-1、③EGFP-cldn-10aとRFP-cldn-10bの組み合わせで共培養し、局在を共焦点レーザー顕微鏡で調べた。①と②では、同種細胞間にはそれぞれのcldnの局在が見られたが、異種細胞間にはいずれのcldnも存在しなかった。しかし、③では同種細胞間に加えて異種細胞間にもそれぞれのcldnが局在した。フリーズフラクチャーによる観察でcldn-10aはP面付着型、cldn-10bはE面付着型のタイト結合を形成した。MDCK I細胞にEGFP-cldn-10aを発現して細胞間電気抵抗値 (TER)を調べると、cldn-10aの発現でTERはほとんど変化しなかったが、cldn-10bの発現でTERは顕著に減少した。
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