研究課題
今年度は、細胞膜を構成する主要な脂質分子種がどのような挙動を示すのかについての解析を、トロンビン刺激後の血小板を材料に解析した。方法は、トロンビン刺激あり、なしの細胞を急速凍結、割断、金属蒸着し、プローブとの反応を行ってから金コロイドで標識し、透過電子顕微鏡で観察した。まず、刺激なしの血小板の細胞膜において、スフィンゴミエリン(SM)とホスファチジルセリン(PS)の分布について調べたところ、赤血球と同様にSMは細胞膜外層に、PSは細胞膜内層に限局して分布していることが明らかとなった。一方、トロンビン刺激後の血小板から放出されるマイクロパーティクルの細胞膜では、SMもPSも内外層の両方に分布していた。また、平面的に見ると分布に偏りが見られた。その反面、血小板そのものの細胞膜では、トロンビン刺激前と同様にSMは外層にPSは内層に限定して分布していた。これらのことから、細胞膜における脂質分布はきわめて厳密に調節されていて、脂質分子の内外層間の反転とマイクロパーティクルの産生には密接な関わりがあることが示唆された。本研究計画の遂行により、手法として用いたSDS処理凍結割断レプリカ標識法は、細胞膜を構成する脂質分子を特異的にかつ高い感度で検出できることが示された。これまでに、種々の実験条件の下での脂質分子の挙動について報告されているが、内外層を分けて考えていない場合、用いたプローブが必ずしも特定の脂質にのみ結合することが示されていない場合や、検出感度の検討がされていない場合など、いずれも1つまたは複数の問題をはらんでいる。そのため、当該手法を用いて再検討することによって、脂質から見た細胞膜の全体像を明らかにすることが可能となるだろう。
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Journal of Lipid Research
巻: 54 ページ: 2933-2943
10.1194/jlr.D041731
http://www.riken.jp/lbl/mainpagelbl.html
http://www.asi.riken.jp/jp/laboratories/chieflabs/lipid/