研究課題/領域番号 |
23590252
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
野津 司 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (30312367)
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研究分担者 |
奥村 利勝 旭川医科大学, 医学部, 教授 (60281903)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 消化管機能 |
研究概要 |
オレキシンの胃運動への作用を,意識下非拘束のラットで検討した.オレキシンを大槽内に投与すると,胃運動は促進した.アトロピンを腹腔内投与すると,オレキシン中枢投与の刺激反応は阻止された.2-DGを静脈内投与すると,胃運動は促進した.オレキシンの拮抗薬である,SB-334687を大槽内投与すると,2-DGの促進反応は抑制された.以上より,内因性に分泌される脳内のオレキシンは,迷走神経を介して,胃運動を促進することを明らかにした.さらにCRFとオレキシンのinteractionについて研究を進め,オレキシンの中枢投与による胃運動促進は,CRFの拮抗薬を中枢に投与しておくと,抑制されることが明らかとなった.一方CRFを皮下注すると,胃運動は用量依存性に促進した.CRFは末梢,あるいは中枢投与すると,胃排出は抑制されるが,末梢投与すると,胃運動は促進することが明らかとなり,胃排出の結果と相反する結果が得られた.この作用は末梢のCRF type1受容体を介する作用であり,CRFtype2 受容体の刺激は,CRFの胃運動刺激作用を抑制した.これはストレスによって起きる生体反応には,必ずその反応にブレーキをかける経路が,生体の生存のために必要であるという仮説を裏付けるものである.一方ストレス負荷により,胃排出は抑制され,この作用は末梢のCRFtype2受容体を介することが明らかとなっている.しかし,実際に胃運動を測定すると,胃運動はストレス負荷中,著明に亢進している.これまでその機序が明らかとなっていなかったが,今回の末梢CRF投与による胃運動促進作用が,その機序である可能性が高くなった.さらに詳細な機序を説明するため実験を継続中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H23年4月には,オレキシンの大槽内投与が大腸運動を促進し,便排出を促進させることを論文上で報告しており,今回の研究と併せて,オレキシンの上部,下部消化管運動への効果を明らかにしたこととなる.さらにCRFとオレキシンのinteractionの証拠を示し,CRFの末梢作用で,これまで全く報告されていない,胃運動促進作用を明らかとした.この事実の機序を,CRFサブタイプ受容体の作用より,その詳細を明らかとして,CRF受容体のcounter regulationと,生体がストレスに対応するための,その生理的な意義を示唆するに至った.当初の予想以上の成果,結果が得られたため,ストレスによる消化管運動の変化のその詳細なメカニズムを,新しい視点より解析ができている.
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今後の研究の推進方策 |
上記のような画期的な末梢CRF作用の結果が得られたため,今度はストレス反応の詳細なメカニズムを明らかにするために,この末梢CRFがいかに関与しているのか研究を進めていく.Water-avoidance stressは,大腸運動を促進させるが,胃運動に与える効果については,報告がない.そこでこのストレスを負荷しつつ,無拘束,意識下の状態で,ラットの胃運動を測定する.胃運動が変化すれば,その作用機序を明らかとする.このメカニズムに,末梢CRFが関与するものと予測される.さらに胃排出を測定して,どのような変化が得られるかを明らかにする.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初,データ解析にコンピュータを導入する予定であったが,実験の進行,結果によりさらなる追加実験が必要となったため,試薬を多量に購入するに至り,導入を見送っている.また,成果発表のため,海外学会への参加を考えていたが,画期的な実験結果が得られたため,まず論文で発表することが重要であると考え,こちらを優先させている.そのため,研究費に幾分余裕ができているが,実験の進行により,さらなる物品費(試薬など)が必要になると予想され,それを考慮しながら補助金を使用するようにしている.
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