研究課題/領域番号 |
23590254
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
丸山 芳夫 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00133942)
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研究分担者 |
村田 喜理 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60455780)
風間 逸郎 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60593978)
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キーワード | 核膜イオンチャネル / 核膜の可塑性 |
研究概要 |
膜の微小表面積変化を計測する方法に膜容量計測法がある。ここでのオルガネラ膜(ミトコンドリア内膜;外側核膜;内側核膜)は支持体である骨格系から開放されており、自由な可塑性・変形性が許されている。細胞質、管腔(マトリックス)、核質など、膜と接触する空間の水溶液環境を変化させた場合、膜の実効表面積の変化が期待できる。膜容量もしくは膜表面積の変化を測定することで、オルガネラ膜の機能的可塑性とその意義を解明する。以上を踏まえ、本年度研究においては、核膜標本での膜容量計測を行った。ホール核包モードにて管腔カルシウム濃度を数マイクロモル(10-200マイクロモル)に固定すると、数秒の遅れを伴い、見かけ上、膜容量の増加がみられた(膜コンダクタンスは一定であった)。カルシウム濃度1マイクロモル以下ではその上昇は観察されず、本反応は管腔カルシウム濃度に依存した反応であることが分かった。また、パッチ膜内での局所膜領域では、膜容量の振幅揺らぎが顕著であり、蛋白輸送に関わる膜小胞の出芽(budding)過程がこの現象の説明として妥当であろうと思われた。この時点で、これらを統一的に説明できる機序の解明が急務となった。つまり、管腔カルシウムの局所濃度が出芽の形成および崩壊機構の制御に与ることが示唆される。通常、管腔カルシウム濃度は1-2mMとされている。総合的にこれらを勘案すれば、本研究における膜容量変化(膜表面積の変化)は、局所カルシウム濃度の減少がその部分の膜小胞形成を促し、かつその小胞構造の維持固定に関わるとの仮説を設定できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
核膜での膜容量計測を実施した。管腔側カルシウムの増加は、見かけ上、膜容量の増加を引き起こした。 膵腺腺房細胞からの核膜イオンチャネルとの比較という意味で、肝細胞の核包を作成しそこでのイオンチャネルを調べた。当初予定外の実験であるが、核膜の多様性を認識することの意義は大きい。
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今後の研究の推進方策 |
本年度研究実績の一端、人工的に膜の小胞化を促すサリチル酸およびクルルプロマジンの効果を巨核球膜において確かめたので、同薬剤を膵腺腺房細胞からの核膜核包に用いることを計画している。膜小胞の形成時における電気的インピーダンスの変化をシミュレートし、核包とイオンチャネルおよび核包と膜容量変化を論文にまとめることを最低限の課題とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
核膜容量成分の増加反応を観測したので、その機序を電気的等価回路のシミュレーションから特定すること企てた。その場合、impedance解析もしくはCable理論に基づく偏微分方程式の数値解析が必要となる。必要なワークステーションおよびソフトの選定に至らず次年度に移行した。よって、ワークステーションの購入にあてる。
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