研究課題
核を覆う二層の膜系(内側および外側核膜)は、それらの形成する核膜腔およびそれらに接する核質(ヌクレオプラズム)と細胞質(サイトプラズム)を含め、核周辺複合体を形成している。われわれの標本では、核は支持体である細胞骨格系から開放されており、自由な可塑性・変形性が許されている。レーザー共焦点顕微鏡システム本体(Degital Eclipse C1)をNikon社より貸借し、既得の蛍光画像と比較しつつ、蛍光断層画像を得た。われわれの標本(小胞体・核標本:マウス膵腺腺房細胞を単一細胞レベルにまで単離し、次いで低浸透圧処理を施す)では、色素(DiOC6:小胞体膜指向性グリーン蛍光)の濃いスポット状部分と薄い平面上部分が識別され、前者は核を取り巻く小胞体の重畳構造(膜の点状塊あるいは核孔への陥入部分)に、後者は核全体を取り巻く一層の外側核膜に由来すると考えられた。その根拠として、膜の流動性および核孔構造の強い膜曲率部の存在が前者に、パッチークランプ法giga-sealの形成可能性(現実に形成できる)が後者において考えられる。いっぽう、水溶性色素(lucifer yellow)を細胞内へ注入すると、核(核ヌクレオプラズム)が選択的に染色され、通路としての核孔の関与が確認できるが、小胞体・核標本では同色素での染色はなく、この通路は閉鎖されている。また、周囲イオン環境をKClよりチャネル不透過のCs-methansulfonateに変化させる(またその逆に)と、核ヌクレオプラズム領域の縮小(拡大)がある。このことは核孔が正常であれば起こりようがない。これらの知見により、核膜の核孔への陥入そしてそれによる核孔の閉鎖が強く疑われた。現在、この点をさらに明確にすべく、lucifer yellowの標本核膜腔への注入を試みている。
すべて 2013
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American journal of Physiology Lung Cell mol Physiol
巻: 305 ページ: L819 - L830
10.1152/ajplung.0053