研究概要 |
心房細動の電気生理学的成因としては発症因子と維持機構の2つの要素があると考えることができる。発症因子としては、肺静脈心筋細胞を起源とする期外収縮が注目されている。その細胞内メカニズムの一つとして肺静脈心筋細胞内リアノジン受容体の機能異常の報告があるが、高血圧性心疾患による拡張障害などがある際には、左房、肺静脈の圧負荷が肺静脈心筋細胞の伸展刺激活性化イオンチャネルを開口し、細胞内へのCa流入によるCa過負荷を引き起こす。その結果として一過性内向き電流の活性化、Triggered activityによる異常興奮が発生し肺静脈内のリエントリーを形成し心房細動発症へとつながる機序が想定されている。そこで、我々は不整脈に関わるCa activated NSCCsとしてのTRPチャネルに焦点をあてた。左房負荷がかかる病態では、TRPチャネルタンパクから構成されるSACやNSC(Ca)の活性化が起こり、それが心房細動の発症要因となると考え、我々は、SACの分子候補として心肥大の際に発現しているTRPC1の関与,および心房圧上昇にTRPC6, 心肥大におけるCa過負荷にTRPM4が関与する可能性を報告した。さらに、心臓ではTRPM4は心室筋よりも心房筋に多く発現しており、またこの発現パターンは心肥大によって変化すると考えられる。従って、TRPM4は心肥大における心房由来の不整脈の原因となる可能性がある。また、圧負荷がかかる状態では、心筋細胞の肥大が引き起こされ、TRPC1の発現亢進が認められる。したがって拡張期有意にCa流入が引き起こされることとなり、結果的に細胞内はCa over load となる。引き続きTRPM4の発現亢進が起こるため、不整脈の発症要因となりうることを報告した。今後は引き続き、TRPchannelと不整脈の関わりについて検討し不整脈治療や心臓病治療の新たなターゲットとしての可能性について検討していく。
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