研究課題/領域番号 |
23590257
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
吉岡 和晃 金沢大学, 医学系, 助教 (80333368)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 血管新生 / ノックアウトノックアウト / PI3キナーゼ |
研究概要 |
ホスファチジルイノシトール3キナーゼPI3K(クラス1型および3型)は生命維持に必須の脂質合成酵素であるが、クラス2型PI3Kの機能は未だ不明である。申請者らは、クラス2型PI3Kα酵素 (C2α)ノックアウト(KO)マウスが血管新生の著しい異常を呈し、胎生致死となることを発見した。細胞・分子レベルの解析から、C2αは特に血管内皮や腸管上皮などの極性細胞において、細胞内小胞輸送の制御による細胞内シグナル伝達・細胞間接着・細胞遊走の調節を介して、極性細胞の機能発現に関わっていることが示唆された。本研究では、血管内皮及び腸管上皮特異的KOマウスおよびインビトロC2αノックダウン細胞を用いて、C2αによる細胞内小胞輸送調節を介した極性細胞の機能発現制御の分子機構を解明することを目的とした。 初年度は、血管内皮細胞特異的C2αコンディショナルKO(CKO)マウスの表現型(形態・機能) 解析を行った。Tie2-Creマウスを用いた恒常型血管内皮特異的C2α-CKOマウスはE10.5~E18.5において胎生致死であった。一般組織染色及び免疫組織染色による組織・細胞構造の観察を行った結果、CKO胎児の広範囲に渡り血管形成の異常が見られた。具体的には皮膚血管において、内皮細胞間接着構造の異常及び壁細胞(ペリサイト、血管平滑筋細胞)の内皮細胞への集積低下が観察された。更に、VEカドヘリン-CreERマウスを用いたタモキシフェン誘導型血管内皮特異的C2α-CKOマウスを用いた生後の血管形成能を解析した結果、出生直後の網膜血管新生が野生型と比べ著しく減弱していた。 以上のことから、C2aはマウス発生期血管新生及び生後の生理的血管形成において必須のPI3Kアイソフォームであることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、血管内皮細胞特異的C2αコンディショナルKOマウスの表現型を明らかにしたが、上皮細胞特異的C2αコンディショナルKOマウスの解析はまだ十分ではない。腸管上皮細胞に着目して、一般組織染色及び免疫組織染色を行ったが、野生型と比べ明らかな差違は認められなかった。
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今後の研究の推進方策 |
血管内皮細胞のおけるC2αの生理的役割を明らかにするために、RNA干渉法によりC2αをノックダウンした培養内皮細胞 (HUVEC) をモデル細胞として細胞内小胞輸送に着目し研究を進める。1)C2α活性産物PtdIns(3)P蛍光イメージング2)内皮細胞におけるGFP標識VEカドヘリ、β-インテグリンの蛍光イメージング、及び透過性制御におけるC2αの役割3)C2αの内皮細胞内小胞上でのシグナル伝達における役割以上の検討を行い、内皮細胞におけるC2αの機能を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度計画していた血管バリアー機能解析を次年度に持ち越したため、今年度未使用額が生じた。次年度において、血管バリアー機能アッセイ系の立ち上げ及び評価試験に必要な試薬消耗品費を今年度未使用額からあてる。他の上記研究計画において、研究費の多くは主に実験に必要とする消耗品にあてる。特に、培養血管内皮細胞(HUVEC)の培養に必要な培地・試薬類及びディスポーザブル・プラスチック製品が主な使途である。更に、免疫細胞染色、ウエスタンブロット解析用の抗体試薬、検査試薬の購入を計画している。
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