研究課題/領域番号 |
23590258
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
豊田 太 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (90324574)
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研究分担者 |
松浦 博 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (60238962)
林 維光 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (80242973)
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キーワード | 国際情報交換(フランス) / 心臓 / イオンチャネル |
研究概要 |
心臓洞房結節細胞のペースメーカー活動に重要な役割を果たすことが示唆されている持続性内向きナトリウム電流(Ist)の分子基盤は依然明らかでない。我々は、イオン選択性の変化した(ナトリウム透過性が増加した)L型カルシウムチャネルがIstを関与するという着想に基づき、洞房結節に発現がみとめられるCav1.2ならびにCav1.3のバリアントを探索してきた。しかしながら、現在までにIstの電気生理学的性質を説明しうるL型カルシウムチャネルの修飾機構を見つけるには至っておらず、我々の作業仮説(L型カルシウムチャネルのバリアントがIstに関与する)を再度見直す必要が出てきた。そこで、Cav1.3ノックアウトマウスならびにジヒドロピリジン(DHP)感受性を低下させたCav1.2ノックインマウスを用いて、IstとL型カルシウムチャネルの分子上での連関を検証することにした。なお本研究は当該マウスモデルを所有するMatteo Mangoni博士(フランス、ゲノム機能研究所)と共同で遂行した。得られた結果の概要を以下に示す。 1)Cav1.3遺伝子を欠損させると、Istは完全に消失した。 2)点変異のノックインによりCav1.2のDHP感受性を欠落させても、IstのDHP感受性は変化しなかった。 これらの結果から、Cav1.3がIstに関連することが明らかとなり、洞房結節細胞においてCaV1.3のイオン選択性を変化させる修飾機構の存在が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、心臓ペースメーカー細胞における持続性内向き陽イオン電流(Ist)の分子基盤を解明することを目的とし、イオン選択性の修飾をともなうL型カルシウムチャネル(CaV)のバリアントがIstを担う可能性について検討してきている。H23年度、洞房結節におけるCaVのバリアントの探索を集中的に行ったが、Istを模倣しうるCaVのスプライスやRNA編集は同定できず、「IstとCaVの関連性」を強く裏付ける実験が必要となっていた。したがって、本年度、遺伝子改変マウスを用いてCaV1.3がIstと関連する強い証拠を得ることができたことは、我々の作業仮説の信頼性を向上するとともに、Istの分子基盤の全容解明に大きな進展となった。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度は、洞房結節においてCaV1.3のイオン選択性が修飾される可能性について検討する。本研究課題の初年度から行っているCaV1.3のバリアントの探索は継続して行うものとし、一方、CaV1.3のイオン選択性がリン酸化や酸化ストレス等により変化する可能性についても検討する。 1)RNA編集がCaV1.3のポア(とくにイオン選択性を担う領域)を修飾する可能性を検討する。洞房結節より全RNAを抽出し、CaV1.3遺伝子の転写物の配列決定を繰り返し行う。 2)CaV1.3を培養細胞に発現させ、種々のキナーゼ、あるいは過酸化水素処理を行い、イオン選択性が変化するかどうかをパッチクランプ法で検討する。一方、洞房結節細胞を脱リン酸化剤や還元剤で処理し、Istが消失するかを確認する。 これらの実験を通して、CaV1.3がIstを構成するメカニズムについて検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の研究費の用途は、PCR、シーケンシング反応キットなどRNA編集を検討する実験試薬類の購入に加えて、実験動物、パッチクランプ実験に使用する試薬やガラス器具等の消耗品の購入に充てる。また、発表論文の校正、投稿にも使用する予定である。
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