研究課題/領域番号 |
23590260
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
小坂 博昭 香川大学, 医学部, 教授 (60158897)
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研究分担者 |
山下 哲生 香川大学, 医学部, 助教 (80444727)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | AIF |
研究概要 |
Apoptosis inducing factor (AIF)がミトコンドリアから放出される機構に関して、当初、ピキア酵母のミトコンドリアにマウスのAIF(mAIF)を遺伝子導入したものを用いて解析を進めてきたが、ピキア酵母にはAIFのホモログが多数存在すること、また利用可能な抗体が少なく解析が困難なことから、発現系をピキア酵母から出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)へ変更した。S. cerevisiaeもAIFホモログを持っているが1種類のみであり、この酵母AIFは哺乳類と同じ酸化ストレスによりミトコンドリアから核内へ移行することが明らかになっている。またAIFのノックアウト株が販売されていることから、野生株およびノックアウト株でmAIFの発現系を構築した。その結果、ミトコンドリアにおいてmAIFが内在性AIFと同様に発現することが確認された。平成23年度の研究計画の第一段階が予定通り終了したことから、現在、内在性AIFおよびmAIFの有無によるミトコンドリア呼吸鎖電子伝達系の影響を調べている。また、AIFの膜からの解離機構に関して、NADH結合時の構造変化が重要であるという報告があることから、AIFのN末端領域と相同性の高く、AIFと同様に構造変化を起こすNADH脱水素酵素(NDH-2)を用いて、どのような条件下で構造変化を起こすかを詳細に調べた。その結果、NADHが酸化されない酸素非存在下で反応中間体が形成され安定な構造変化を起こすことが示された。この反応中間体は酸素存在下でも短時間形成されるが、NADHの酸化活性の強い変異体では確認されなかった。一方、AIFは酸素存在下でも安定な構造変化を起こすことから、NADH結合時の反応中間体と酸素との反応性がNDH-2よりも十分に低いために安定な構造変化を起こしていることが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、「哺乳類AIFの機能解析のための発現系」としてピキア酵母を用いる予定であり、実際に発現系を構築したが「研究実績の概要」で述べた理由によりS. cerevisiaeを用いた発現系に変更した。S. cerevisiaeは分子遺伝学、細胞生物学のモデル生物であり、ORF発現株ライブラリーや遺伝子破壊株ライブラリーが豊富で、内在性AIFのノックアウト株を購入することが出来たため、平成23年度の研究目標の一つである哺乳類AIFだけをミトコンドリアに発現させた系を構築することが出来た。現在、この組換え酵母からミトコンドリアを調整し呼吸活性を測定中である。また平成23年度の計画には入っていなかったが、AIFの膜からの解離機構を調べる上で今後重要になってくるAIFの構造変化の条件をNDH-2を使って検討した。この結果は平成24年度に予定しているAIF自体の機能解析に直接的に反映できることから、ミトコンドリアの呼吸活性測定といった面で若干の遅れはあるが、おおむね順調に計画は進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に予定していたAIFのミトコンドリア呼吸鎖への関与の有無についての解析が終わっていないため、今後、最優先で解析を行っていく。また、平成24年度の計画である「精製したAIFでの機能解析」について、大腸菌発現系では本来膜タンパク質であるAIFが膜タンパク質としては生成されないため、AIFを遺伝子導入した酵母のミトコンドリアにおいて膜タンパク質として発現したmAIFを用いて生化学的解析を行う予定である。具体的には、1)ミトコンドリアからのAIFの精製、2)精製酵素の呼吸活性の有無、3)ミトコンドリア型AIFの酸化還元に伴う構造変化の有無にしぼって研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験計画の若干の遅れにより余剰した平成23年度研究費は次年度に計画通り使用する予定である。また、次年度の研究推進方策に従い、主に培養関連試薬、タンパク質精製用器具およびレジン、タンパク質化学用試薬を購入する予定である。また、学会等への参加費および論文作成の費用等も予定通り使用する。
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