研究課題/領域番号 |
23590260
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
小坂 博昭 香川大学, 医学部, 教授 (60158897)
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研究分担者 |
山下 哲生 香川大学, 医学部, 助教 (80444727)
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キーワード | AIF |
研究概要 |
Apoptosis inducing factor (AIF)がミトコンドリアから放出される機構に関して、当初、ピキア酵母にマウスのAIF(mAIF)を遺伝子導入したものを用いて解析を進めてきたが、ピキア酵母にはAIFのホモログが多数存在すること、また利用可能な抗体が少なく解析が困難なことから、発現系をピキア酵母から出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)へ変更した。S. cerevisiaeもAIFホモログを持っているが1種類のみであり、この酵母AIFは哺乳類と同じ酸化ストレスによりミトコンドリアから核内へ移行することが明らかになっている。現在、野生株およびAIFノックアウト株でmAIFの発現系を構築し、内在性AIFおよび外来性AIFの生育に対する影響、ミトコンドリア呼吸鎖電子伝達系の影響、および細胞死誘導刺激によるAIFの細胞内での挙動について解析している。 また、AIFの膜からの解離機構に関して、NADH結合時の構造変化が重要であるという報告があるが、実際に基質の結合や酸化還元の違いで膜から解離するかを調べるため、大腸菌における発現系を構築し、膜からの解離機構について解析している。さらに最近、AIFのN末端領域と相同性が高く同様にNADH結合時に構造変化を起こすNADH脱水素酵素(NDH-2)がAIFと同じく細胞死誘導刺激によってミトコンドリアから解離するという報告があるため、同様に大腸菌膜からの解離機構についても解析を進めている。NDH-2については精製酵素を用いた解析から、NADHが酸化されない酸素非存在下で反応中間体が形成され安定な構造変化を起こすことが示されたが、AIFは酸素存在下でも安定な構造変化を起こすことから、NADH結合時の反応中間体と酸素との反応性がNDH-2よりも十分に低いために安定な構造変化を起こし膜から解離すると予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、「AIFの膜からの解離機構」として酵母S. cerevisiaeを用いて解析する予定であったが、AIFを発現誘導する培地での培養では生化学的解析に用いるミトコンドリアの量が少なく、解析が困難であったことから大腸菌での発現系を構築した。これまでにAIFの大腸菌での発現実験は数多く報告されてきたが、本来膜タンパク質であるAIFが可溶性画分に発現しており、膜からの解離機構について調べることは出来なかったが、今回我々が作成した大腸菌発現系においてはAIFが一部膜に結合しているため、大腸菌膜を使った生化学的解析が可能になった。以上のことから「膜からの解離機構」の解析は順調に進行していると考えている。 また計画には入っていなかったが、AIFの膜からの解離機構を調べる上で今後重要になってくるAIFの構造変化の条件を我々が以前より研究しているNDH-2を使って検討した。この結果は平成25年度に予定しているAIF自体の機能解析に直接的に反映できることから、ミトコンドリアの呼吸活性測定といった面で若干の遅れはあるが、おおむね順調に計画は進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に予定していたAIFのミトコンドリア呼吸鎖への関与の有無についての解析が終わっていないため、既に構築している酵母ミトコンドリア発現系を用いて最優先で解析を行っていく。また、平成25年度に予定している「AIFの膜からの解離機構」については、上述のように大腸菌膜に発現させることができたことから、本来ミトコンドリアで行う予定であった生化学的解析を大腸菌の膜を用いて解析する。さらに、AIFの酵母ミトコンドリア発現系を用いて大腸菌膜からの解離条件が実際に細胞レベルで起こりうるかを検討する。また、AIFの精製酵素を用いた機能解析については平成24年度に得たNDH-2の機能解析の結果を参考に、特にNADH結合時の反応中間体が酸素存在下で安定である機構を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験計画の若干の遅れにより余剰した平成24年度研究費は本年度に計画通り使用する予定である。また、次年度の研究推進方策に従い、主に培養関連試薬、タンパク質精製用器具およびレジン、タンパク質化学用試薬を購入する予定である。また、学会等への参加費および論文作成の費用等も予定通り使用する。
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