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2011 年度 実施状況報告書

尿細管イオン輸送体の機能発現を制御する機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23590265
研究機関帝京大学

研究代表者

種本 雅之  帝京大学, 医学部, 准教授 (40303945)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2015-03-31
キーワードカリウムチャネル / 尿細管輸送 / 細胞内局在 / Gitelman症候群 / EAST症候群 / 電解質恒常性 / ナトリウム輸送
研究概要

腎尿細管輸送はNa+/K+-ATPaseを駆動力とするため、駆動の維持に不可欠なK+-recyclingを担うK+輸送路が腎尿細管輸送の律速段階となる。我々は従来の研究で、ラット腎においてはK+チャネルKir1.1が管腔側K+輸送路をKir4.1/Kir5.1が基底膜側K+輸送路を各々構成することを解明していた。近年、Kir4.1が尿細管輸送障害を呈する遺伝性疾患であるEAST症候群の原因遺伝子であることが判明したが、Kir4.1の遺伝子異常がヒト腎臓において尿細管輸送障害を呈するメカニズムは充分に解明されていなかった。 本研究では、ヒト腎遠位曲尿細管においてもラットと同様Kir1.1とKir4.1/Kir5.1が各々管腔側と基底膜側のK+輸送路を構成していることを明らかにした。また、EAST症候群で認めるKir4.1遺伝子異常が、K+チャネルの活性阻害と発現阻害の2つのメカニズムにより、腎遠位曲尿細管基底膜側K+輸送を障害することを明らかにした。この結果により、基底膜側K+輸送障害が管腔側Na+輸送障害と同様に尿細管Na+漏出を呈することを示し、K+-recyclingが腎尿細管輸送の律速段階であることを臨床レベルで確認した。更に、従来の研究でK+チャネル基底膜側発現に関与することを解明していたアンカータンパクMAGI-1aとKir4.1の相互作用障害が、K+輸送阻害の原因となるタイプのEAST症候群があることを明らかにした。この結果は、MAGI-1aが細胞内局在に関与しない臓器においてはK+輸送を障害しないタイプのKir4.1遺伝子変異の存在を示唆する。このタイプは尿細管Na+漏出のみを表現系とすることが推察され、Kir4.1がGitelman症候群の原因遺伝子の一つである可能性を示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

腎遠位尿細管における電解質輸送の制御機構を、輸送に関与するタンパク質分子の相互作用を制御する機構の側面から、解明することが本研究課題である。本年度の研究ではゲノムから推定されるタンパク質分子の変異が電解質輸送を障害するメカニズムを解明した。この結果は、遺伝性疾患の病態から制御機構の解明を進めたものであり、研究課題の解明に向けて概ね順調に研究が進行していると考えられる。

今後の研究の推進方策

これまでの研究において、K+チャネルが尿細管において機能発現するためには機能発現部位の細胞表面直下への輸送後に細胞表面へ輸送する過程が必要であることが明らかになった。今後の研究で細胞表面への輸送を制御する機構の解明を進めて行く。また、生体の電解質恒常性維持においては、腎臓での制御に加え腸管での制御が関与することを示唆する臨床的知見を得ており、電解質恒常性維持機構の解明に向けて腸管におけるK+輸送のメカニズムの解明も進めて行く。

次年度の研究費の使用計画

細胞表面へ輸送過程の解明に向け、細胞内小胞輸送の制御に関与することが報告されている細胞内カルシウムに関する研究を計画していた。しかし、当初の研究費が交付予定額より減額されたために、この研究を追加交付後に推進することとなった。これにより、研究遂行に要する費用を次年度に繰り越して施行することとした。K+チャネルの細胞表面へ輸送機構の解明を行う研究に使用する予定である。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2011

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (13件)

  • [雑誌論文] Metabolomic profiling of the autosomal dominant polycystic kidney disease rat model.2011

    • 著者名/発表者名
      Toyohara T, Suzuki T, Akiyama Y, Yoshihara D, Takeuchi Y, Mishima E, Kikuchi K, Suzuki C, Tanemoto M, Ito S, Nagao S, Soga T, Abe T.
    • 雑誌名

      Clin Exp Nephrol

      巻: 5 ページ: 676-687

    • DOI

      10.1007/s10157-011-0467-4

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Angiotensin II induced phosphorylation of the sodium chloride cotransporter.2011

    • 著者名/発表者名
      Tanemoto M, Uchida S.
    • 雑誌名

      Kid Int

      巻: 12 ページ: 1381

    • DOI

      10.1038/ki.2011.92

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Luminal alkalinization attenuates proteinuria-induced oxidative damage in proximal tubular cells.2011

    • 著者名/発表者名
      Souma T, Abe M, Moriguchi T, Takai J, Yanagisawa-Miyazawa N, Shibata E, Akiyama Y, Toyohara T, Suzuki T, Tanemoto M, Abe T, Sato H, Yamamoto M, Ito S.
    • 雑誌名

      J Am Soc Nephrol

      巻: 4 ページ: 635-648

    • DOI

      10.1681/ASN.2009111130

    • 査読あり
  • [学会発表] 慢性血液透析患者の二次性副甲状腺機能亢進症に対するビタミンD3静注が心血管系疾患に及ぼす影響2011

    • 著者名/発表者名
      野坂仁也,中嶋英明、神長達郎、清水淑子、目良純一郎、大島譲二、猪上剛敏、中村一路、兒島憲一郎,種本雅之、内田俊也、埼京地区腎と透析研究会
    • 学会等名
      第56回 日本透析医学会学術集会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2011.6.17
  • [学会発表] 新規酸化ストレスマーカーである血漿プラスマローゲンの血液透析導入前後における変化についての検討2011

    • 著者名/発表者名
      奈倉倫人、兒島憲一郎,大熊慶子、上田修子、矢野弘史、泉川由布、山崎ちひろ、本間 仁、種本雅之、前場良太、岡崎具樹、内田俊也
    • 学会等名
      第56回 日本透析医学会学術集会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2011.6.17
  • [学会発表] 当院の腎センターにおける院内感染予防策の再評価2011

    • 著者名/発表者名
      滝田 光、川崎義隆、河野将行、三村紀子、新井繁幸,冨丘 聡,熊谷天哲,野坂仁也,兒島憲一郎、種本雅之、内田俊也、大嶽浩司、福田 悟
    • 学会等名
      第56回 日本透析医学会学術集会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2011.6.17
  • [学会発表] 尿細管ヘンレ上行脚Na+輸送を制御する新たな機構の解明2011

    • 著者名/発表者名
      三島英換,竹内陽一,秋山泰利、鈴木健弘、阿部高明、種本雅之、内田俊也、伊藤貞嘉
    • 学会等名
      第54回 日本腎臓学会学術総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2011.6.15
  • [学会発表] 血液透析導入時期を決定する血液検査値の解析-ROC解析による検討2011

    • 著者名/発表者名
      冨丘 聡,泉川由布、大野弘毅、島田 勝、山崎ちひろ、小高健三、山下正弘、高橋和志、本間 仁、熊谷天哲,目良純一郎、種本雅之、内田俊也、清水淑子
    • 学会等名
      第54回 日本腎臓学会学術総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2011.6.15
  • [学会発表] 慢性腎臓病ステージは動脈硬化性腎臓脈狭窄病変に対する血行再建治療の効果予測因子2011

    • 著者名/発表者名
      種本雅之、鈴木健弘、大熊慶子、上田修子、岸田朋子、久保英二、小林加奈、奈倉倫人、矢野弘史、野坂仁也,兒島憲一郎,阿部高明、伊藤貞嘉、内田俊也
    • 学会等名
      第54回 日本腎臓学会学術総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2011.6.15
  • [学会発表] 偽性アルドステロン症の予知におけるグリチルリチン負荷試験の有用性2011

    • 著者名/発表者名
      種本雅之,鵜沼 智、新井繁幸,冨丘 聡,熊谷天哲,野坂仁也,田村好古、兒島憲一郎、内田俊也、本間桂子、小山雄平、柴田洋孝
    • 学会等名
      第84回 日本内分泌学会学術総会
    • 発表場所
      神戸国際会議場
    • 年月日
      2011.4.21
  • [学会発表] 腎血管性高血圧症の診断と治療2011

    • 著者名/発表者名
      種本雅之
    • 学会等名
      第41回 日本腎臓学会東部学術総会(招待講演)
    • 発表場所
      京王プラザホテル
    • 年月日
      2011.10.14
  • [学会発表] HBV関連膜性腎症によるネフローゼ症候群に対してエンテカビルを使用した1例2011

    • 著者名/発表者名
      上田修子、白石武司、山崎ちひろ、新井繁幸,秋元寛正、兒島憲一郎,種本雅之,内田俊也
    • 学会等名
      第41回 日本腎臓学会東部学術総会
    • 発表場所
      京王プラザホテル
    • 年月日
      2011.10.14
  • [学会発表] ループス腎炎の経過中にSLEによる蛋白漏出性胃腸炎を発症した1例2011

    • 著者名/発表者名
      岸田朋子、泉川由布、小高健三、新井繁幸,冨丘 聡,兒島憲一郎,種本雅之,内田俊也
    • 学会等名
      第41回 日本腎臓学会東部学術総会
    • 発表場所
      京王プラザホテル
    • 年月日
      2011.10.14
  • [学会発表] 造影CTにて診断しえた腎血管性高血圧の1例2011

    • 著者名/発表者名
      小林加奈、岸本祐毅、小菅正裕、加藤秀樹、野坂仁也,目良純一郎、種本雅之,内田俊也
    • 学会等名
      第41回 日本腎臓学会東部学術総会
    • 発表場所
      京王プラザホテル
    • 年月日
      2011.10.14
  • [学会発表] 9年の間隔をあけて両側腎梗塞を発症した腎動脈解離の一例2011

    • 著者名/発表者名
      大熊慶子、奈倉倫人、武田剛一、本間 仁、加藤秀樹、野坂仁也,種本雅之,武藤 智、堀江重郎、内田俊也
    • 学会等名
      第41回 日本腎臓学会東部学術総会
    • 発表場所
      京王プラザホテル
    • 年月日
      2011.10.14
  • [学会発表] 1クールのステロイドパルス療法にて完全寛解が得られた糖尿病合併IgA腎症の1例2011

    • 著者名/発表者名
      矢野弘史、西山ゆり、山下正弘、野坂仁也,兒島憲一郎,種本雅之,中村一路、内田俊也
    • 学会等名
      第41回 日本腎臓学会東部学術総会
    • 発表場所
      京王プラザホテル
    • 年月日
      2011.10.14

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公開日: 2013-07-10  

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