研究課題/領域番号 |
23590265
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
種本 雅之 帝京大学, 医学部, 准教授 (40303945)
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キーワード | カリウムチャネル / 尿細管輸送 / 細胞内局在 / Gitelman症候群 / EAST症候群 / 電解質恒常性 / ナトリウム輸送 |
研究概要 |
腎尿細管イオン輸送はNa+/K+-ATPaseを駆動力とするため、駆動の維持に不可欠なK+-recyclingを担うK+輸送路が腎尿細管イオン再吸収の律速段階となると考えられる。我々は昨年までの研究で、ラットと同様にヒト腎においても、管腔側K+輸送路をK+チャネルKir1.1が構成し、また、基底膜側K+輸送路をKir4.1/Kir5.1が構成することを明らかにし、さらにEAST症候群の原因遺伝子であることが判明したKir4.1上の遺伝子変異が基底膜側K+輸送の障害により尿中へのNa+漏出を来すことを明らかにした。 本年度の研究では、EAST症候群で認められるKir4.1の遺伝子異常がそのK+チャネルに及ぼす特徴から3つのタイプに分類できることを明らかにし、1つのタイプでは、基底膜側へのK+チャネル発現障害がK+輸送障害を起因し、このタイプの遺伝子異常が腎以外ではK+輸送障害による異常を呈さず尿細管Na+再吸収障害のみを呈する可能性を示した。この結果は、表現系がGitelman症候群と同じであるKir4.1遺伝子変異が存在する可能性を示し、Gitelman症候群様の尿細管異常を呈する疾患においてKir4.1遺伝子変異を検査する必要性を示唆する結果である。 また、研究の過程でヒト近位尿細管においてKir5.1が発現している可能性を明らかにした。これは、現在までに未同定である近位尿細管K+輸送路の解明に繋がる結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
尿細管イオン輸送体の機能発現制御機構を解明することが本研究課題である。本年度までの研究では、イオン輸送におけるK+-recyclingを担うK+チャネルの基底膜側への機能発現を制御する機構の解明を中心に研究を進めた。特に、K+チャネルの機能異常を来す遺伝子異常に着目し、遺伝子異常の側面から制御機構の解明を進めることにより、K+チャネルの機能発現には基底膜側へのチャネル分子の局在輸送と、局在するチャネル分子の細胞膜上への発現という過程が共に重要であることを明らかにできた。この結果を論文発表するにための追加実験に予定外の時間を要したが、その間に、局在輸送されたチャネル分子の細胞膜上における膜表面への発現にカルシウムを介した細胞内シグナルが関与していることも、さらに明らかにしつつある。さらに、研究の過程で近位尿細管K+輸送路の解明に繋がる結果を得ることもできており、研究課題の解明に向けて概ね順調に研究が進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、チャネルの尿細管における機能発現は、機能発現部位近傍への輸送過程と、輸送後の細胞表面への発現過程が必要であることを明らかにしており、後者のプロセスにカルシウムを介した細胞内シグナルが関与していることを明らかにしつつある。今後の研究で細胞内シグナルを制御する機構の解明を進めて行く。また、本研究課題である「尿細管イオン輸送体の機能発現制御機構を解明」にむけて、管腔側輸送担体であるイオン共輸送体の制御過程の研究も開始しスプライシングが機能制御に関与する可能性を明らかにしつつあり、近位尿細管K+輸送路の同定できる可能性も明らかにしており、これらの研究も推進してゆく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞内小胞輸送の制御に関連することが予想される細胞内カルシウムに関する研究に着手しているが、研究結果の論文発表に際して追加実験が必要となり、細胞内カルシウム濃度変化のイメージングを充分に検討できなかった。この実験に要する費用を次年度に繰り越して施行することとした。 また、イオン共輸送体の発現制御に関する研究も進めており、イオン共輸送体の腎臓局所における発現の変化量を測定する必要性が予想される。このために、尿細管セグメント毎の定量的測定実験を行う予定であり、この研究に要する費用にも使用する予定である。
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