研究課題
新規ペプチド (SP) は、線溶系因子のスタフィロキナーゼ内のアミノ酸配列の一部に相当する配列をもとに我々が合成したもので、線溶系の酵素前駆体である プラスミノーゲン (Plg) に対し結合し活性化促進作用を示す。また、最近、線溶系因子は組織障害後の修復・再生過程において蛋白分解活性の調節や細胞機能の制御などに深く関わることで注目されている。そこで、本研究では組織障害後の修復・再生過程でのSPによる蛋白分解活性の調節機構の重要性を解明し、さらにSPの再生促進作用としての再生医療への応用的発展を目的とする。 平成23年度はSPの皮膚の修復・再生過程に対する効果について、既に樹立化しているマウス皮膚からの線維芽細胞の培養系を用いて解析した。皮膚線維芽細胞は、SPまたは塩基性線維芽細胞増殖因子(b-FGF)の単独/混合添加した培地で培養した。マウス皮膚線維芽細胞はurokinase-type Plg activator (u-PA)およびtissue-type Plg activator (t-PA)を発現・分泌していた。また、b-FGF添加した線維芽細胞はu-PAおよびt-PAの合成・分泌を濃度・時間依存性に亢進した。一方、PAによるPlg活性化は線維芽細胞存在下で亢進し、さらにSP添加によりその亢進作用が増強した。また、SPは線維芽細胞に対してPlgを介して結合した。以上の結果より、SPはマウスの皮膚の修復・再生過程において線維芽細胞周囲での蛋白分解活性を調節することを示唆した。また、このSPの作用についてin vivo系での解析を次年度(平成24年度)行うためにマウス皮膚創傷治癒モデルを確立した。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画としてたてた到達目標にほぼ達した。マウスの皮膚線維芽細胞を用いた培養細胞系で、SPの細胞周囲での蛋白分解活性促進作用を解明した。また、次年度に計画しているマウス皮膚の損傷治癒モデルによるSPの効果に対しては、その実験系を確立した。
次年度は、当初の計画通りマウス皮膚の修復・再生過程に対するSPの効果をPlg遺伝子欠損マウス(PlgKO)およびその野生型マウス(WT)の皮膚創傷治癒モデルを用いて解析する。マウスは、当大学内施設で自家繁殖し使用する。マウスへの薬物投与は除放性効果を有するMedGel((株)メドゼェル)を用いる。皮膚の創傷治癒過程は、組織切片の染色法と組織における蛋白分解活性で解析する。研究成果の一部を英文論文投稿と学会発表を予定している。
消耗品費 1,150,000 円 (組織染色用試薬:700,000円、活性測定用試薬:100,000円、マウス飼料費:200,000円、その他試薬:150,000円)、謝金等 50,000円 (論文投稿料:50,000円)、その他 50,000円 (学会参加費:50,000円)
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
J Thromb Haemost
巻: 9 ページ: 997-1006
Thromb Haemost
巻: 105 ページ: 892-900