研究概要 |
成熟ウィスター系雄ラット前頭前野スライス標本から細胞内記録記録を行うと、錐体細胞の静止膜電位は-71±10 mV, 膜入力抵抗は42±14 MΩ, 活動電位の閾値は-47±7 mV, 振幅は91±9 mV, half widthは0.95±0.19 msecであった。一方、多形細胞(非錐体細胞)の静止膜電位は-74±10 mV, 膜入力抵抗は43±10 MΩ, 活動電位の閾値は-46±9 mV, 振幅は87±18 mV, half widthは1.18±0.59 msecで、多形細胞の方が静止膜電位は深く、活動電位振幅が低く、half widthも広い傾向にあった。錐体細胞では、弱い電気刺激(持続時間200 μs, 強度2-3 V)で興奮性シナプス後電位(EPSP)のみ誘起され、さらに刺激強度を増すと抑制性シナプス後電位(IPSP)が誘起され、EPSPの発生閾値は2 V、IPSPの発生閾値は3.5 Vであった。EPSPはAMPA型グルタミン酸受容体拮抗薬でほとんど抑制され、イオン透過型グルタミン酸受容体の活性化で誘起されていると考えられる。IPSPは速い成分(数十ms)と遅い成分(数百ms)に分けられ速い成分はGABAA受容体を介するCl-電位であると考えられ、IPSPの遅い成分はGABAB受容体を介するK+電位であると思われた。ドパミンの灌流投与(1 - 10 μM)を行って得られたドパミン誘起電位は、約8%の錐体細胞で5 mV前後の脱分極電位が、18%の多形細胞で5 mV前後の脱分極電位のみ、あるいは過分極電位のみがみられ、ドパミンに対する直接応答の頻度が錐体細胞と多形細胞で差があった。EPSPに対するドパミンの作用は100 nMより高濃度で抑制がみられることが多く、IPSPに関してはIPSPの速い成分、遅い成分ともに100 nMより高濃度で抑制が見られた。
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