研究課題/領域番号 |
23590269
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
田中 永一郎 久留米大学, 医学部, 教授 (80188284)
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研究分担者 |
村井 恵良 久留米大学, 医学部, 准教授 (40322820)
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キーワード | 前頭前野 / 第II-III層 / ニューロン / 静止電位 / ドパミン / シナプス電流 |
研究概要 |
成熟ウィスター系雄ラットの前頭前野スライス標本(厚さ400μm)を対象に、前頭前野第II-III 層内ニューロンから細胞内記録記録を行い、単一電極電位固定法を用いて静止膜電位(-70 mV)に固定して、弱い電気刺激(持続時間200μs, 強度2-3 V)により速い興奮性シナプス後電流(fast EPSC)のみを誘起した。さらに、イオンチャネル型グルタミン酸受容体拮抗薬、CNQX (10μM)およびAP5 (100μM)を灌流投与して、刺激強度を4-4.5 Vに上昇させ、抑制性シナプス後電流(IPSCs)を惹起した。これらfast EPSCおよびfast IPSCに対するドパミン作用薬(D1様受容体作働薬、SKF38393 (1μM)およびD2様受容体作働薬、quinpirole (1μM))の効果を検討した。ほとんど全てのニューロンでfast EPSCの振幅はSKF38393の灌流投与により変化はみられなかった。50%のニューロンでfast EPSCの振幅はquinpiroleの灌流投与により変化はみられず、28%のニューロンではfast EPSCの振幅が増大(対照の168 ± 70%に増加)し、その内60%のニューロンではquinpirole灌流後にfast EPSCの後に新たなCNQX感受性のEPSCが発生した。これは、再帰性の興奮性入力が新たに出現したものと考えられた。検討した全てのfast IPSCはquinpiroleの灌流投与によりその振幅が減少した(対照の86 ± 9%に減少)。これらから約30%の前頭前野II-III層ニューロンで、D2様受容体作活性化はfast IPSC抑制による脱抑制効果を介しfast EPSC振幅増大を起こすと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
EPSPを単離するためにGABAA拮抗薬、bicucullineを灌流投与したが、bicuculline濃度を低下させてもEPSPは極端な増大を示し、多シナプス性のけいれん様放電になるために、電流固定記録法をあきらめ、電位固定記録法に変更するまでに時間がかかったこと。
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今後の研究の推進方策 |
前頭前野第II-III 層スライス標本(厚さ250μm)を作製し、近赤外微分干渉顕微鏡を用いてスライスパッチを行い、ドパミンによるEPSCおよびIPSCの抑制機序について、検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
近赤外微分干渉顕微鏡下で使えるスライス薄切標本が成熟ラットで作れるかどうかが焦点となり得る。難しい場合はできるだけ若いラットで薄切標本を作成するようにしたい。
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