研究課題/領域番号 |
23590270
|
研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
立山 充博 生理学研究所, 分子生理研究系, 准教授 (30276472)
|
キーワード | GPCR / FRET / G protein / imaging |
研究概要 |
本研究は、Gタンパク質共役型受容体のシグナリングについて、蛍光共鳴エネルギー遷移(FRET)法を用いた速度論的な解析を行い、その詳細を解明することを目的としている。 Gタンパク質共役型受容体は作用薬との結合により静止状態から活性化状態となるが、それぞれの状態に対応する構造や状態間の遷移は作用薬以外の多様な因子により影響を受けることが知られている。そこで、FRET法を用いて二つの状態間の遷移を直接的にとらえ、Gタンパク質との結合や膜電位が状態間の遷移にどのような影響を与えるかについて検討した。ムスカリン受容体I型に蛍光タンパク質を付加し、作用薬投与によりFRET効率が可逆的・濃度依存的に変化することを確認し、FRET変化が活性化状態に対応すものと考えた。作用薬によるFRET変化は、Gqタンパク質との結合により増大すること、膜電位により影響を受けることを見出した。さらに、高時間分解能FRET解析により、Gqタンパク質は活性化状態を安定させること、膜電位は活性化状態への移行に影響を与えることを見出し、これを報告した。また、膜電位とGqタンパク質は、異なる作用様式を示すことを明らかにした。 さらに、Gqタンパク質の効果について他のGq共役型受容体についても検討した。ムスカリン受容体3型ではムスカリン受容体I型と同様な効果を確認できたが、プリン受容体I型ではGqタンパク質によるFRET変化の増大は確認できなかった。このような差異を生ずる機構について検討し、報告する予定である。 また、研究計画に従い、Gi共役型受容体の活性化状態および静止状態を捉えるべくFRETコンストラクトを作成中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的は、Gタンパク質共役型受容体の活性化に対するGタンパク質の影響を高時間分解能FRET解析により明らかにすることである。この点について、ムスカリン受容体I型を用いた研究では、Gタンパク質が受容体と結合し活性化状態を安定化するという機構をFRETを用いることで、より直接的に示すことができた。また、Gqタンパク質による受容体活性化状態の安定化作用は、受容体の種類によりその程度が大きく異なるという知見を得ている。これは、当初の予想とは異なる結果であり興味深い。さらに、Gi共役型受容体についても研究を展開できる状況にある。 受容体とGタンパク質の会合・解離についても、FRET法により捉えることに成功しており、ムスカリンI型について報告し、他の受容体についても報告予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
Gqタンパク質による受容体活性化状態の安定化作用は、受容体の種類によりその程度が大きく異なるという知見を得ているが、このような差異を生む機構について、さらに検討を加え、得られた成果を報告する。 また、Gi共役型受容体についても同様な研究を行い、Gタンパク質共役型受容体の活性化構造の安定化にGタンパク質の結合が関与することを示すとともに、その効果の多様性についても明らかにしていく。 作用薬が受容体から解離する速度は、受容体および作用薬の種類により大きく異なる。この違いは、Gタンパク質活性化状態など下流のシグナリングの持続時間にも大きな影響を与える。そこで、受容体の活性化過程、Gタンパク質との会合・解離、Gタンパク質の活性化について、それぞれの速度論的解析から、シグナリングのモデリングにも取り組みたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
多種多様なコンストラクトを作成するための分子生物学的実験およびコンストラクトを発現し機能解析を行うための細胞培養系が必須である。これらの実験に必要な消耗品の購入を予定している。また、研究成果を報告するために、旅費および論文掲載費を予定している。 受容体によっては、活性化および脱活性化への移行が遅いものがあり、蛍光タンパク質の褪色が問題になる場合も出てきているため。励起光の露光を制御できるシステムの導入も検討している。
|