G蛋白質共役型受容体(GPCR)は神経伝達物質やホルモンなどの生理活性物質と結合し、その情報を細胞内に伝達する役割を担うシグナリング分子である。リガンドとの結合によりGPCRが活性型構造になると、G蛋白質との結合およびG蛋白質の活性化が可能となり、下流に存在する多様なシグナリング経路が活性化される。 これらGPCRシグナリングの初期過程である受容体活性化および受容体とG蛋白質との結合について、我々は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)計測法を用いて詳細な解析を行った。まず、受容体の細胞内第3ループ(i3)とC末端領域にそれぞれ異なる色の蛍光蛋白質を導入し、蛍光蛋白質間でのFRET効率を計測したところ、作用薬投与による有意なFRET効率の減少を認めた。FRET効率の減少は、作用薬と受容体の結合により受容体のi3とC末端領域が離れるように動くという構造変化を示唆するものであるが、これは、X線結晶構造解析を基にした受容体活性化モデルとよく一致するものであった。我々の作成したFRETコンストラクトは、G蛋白質との結合能を保持していたため、G蛋白質を共発現させた条件でFRET計測を行ったところ、作用薬によるFRET効率の減少量が顕著に増大することを見出した。さらに、高時間分解能FRET解析から、作用薬除去によるFRET効率の回復(受容体の脱活性化過程)がG蛋白質共発現時には有意に遅延することも見出した。これらの結果は、G蛋白質との結合により受容体の活性化構造が安定化することを反映するものと考えられた。また、この安定化作用は、受容体ごとに異なることも見出しこれを報告した。
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