これまで唾液腺傍細胞水輸送を推定するために、蛍光物質の細胞間分泌細管への出現を報告した。本年度は急速凍結割断レプリカの観察と高速共焦点レーザ走査顕微鏡による観察をあわせ、臓器の組織構造について検討した。 Wistar/ST系雄性ラットをペントバルビタールで麻酔し、個体から顎下腺を摘出し、共焦点顕微鏡ステージに灌流顎下腺を置き、動脈から血管灌流を行った。灌流状態で高速スライス(2秒間隔でz軸方向64枚)を取り込み、立体再構成および管腔内(細胞間分泌細管内)の色素信号を計測した。一方、摘出灌流中の唾液腺小葉をスライスし、これを液体ヘリウムで冷却した銅ブロックに圧着、灌流唾液腺を急速固定した。この凍結試料を-120℃で表面割断を実施し、その後-100℃にてdeep etchingを施した後、レプリカを作成した。 1)細胞質側より観察された細胞間分泌細管の直径は急速凍結割断レプリカでは0.5μmだった。灌流腺で分子量約500のSulforhodamin Bの信号はスライス厚1-2μm以下ですでに低下した。これはタイト結合に加えdesmosomeなどの構造も蛍光物質のバリアになることを示した。共焦点顕微鏡ステージに灌流顎下腺を置き、細胞間隙においてbasal infolding やdesmosomeにより蛍光色素は不均一に分布した。2) 3D画像処理により同一スライス内に細胞間隙と細胞間分泌細管が観察された。細胞間隙には蛍光物質の振動が観察された。細胞間分泌細管への色素流入は同じスライスでも個々の細管で多様性を示した。3)共焦点レーザ顕微鏡は蛍光色素の分布状態を示すが、得られる画像は用いた蛍光色素の分子量により異なる。この小さな蛍光物質により腺房の形態を初めて観測できた。今回初めて、摘出灌流唾液腺においてmw=500程度の蛍光分子の分布する空間が3Dで理解されるとともに、小分子量の蛍光色素を用い、新しい形態観察が可能になった。
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