研究課題
本年度は、レプチンシグナルの過剰産生による胃癌発症モデルマウスについてOncogeneに発表した。そしてさらに食餌性肥満モデルを用い、消化管特に胃における粘膜恒常性機構を調べている。高脂肪食摂食マウスでは、ヒト萎縮性胃炎に類似の病態が示されるが、レプチンシグナル欠損であるob/obマウスおよびdb/dbマウスでは、顕著な肥満を示すものの、高脂肪食による胃粘膜過形成および萎縮性は野生型のように顕著ではない。従って、高脂肪食による胃粘膜病態形成および増悪化にはレプチンシグナルが重要であることが示唆される。また、高脂肪食摂食後、炎症など胃病理像の変化がまだほとんど見られない段階において、腸上皮化生のマーカーであるcdx2などの遺伝子発現が亢進され、それらの変動とレプチン産生の増加が並行して見られるた。これらの結果は、肥満が消化器癌発症の危険因子であることが最近報告されているが、そのメカニズムの1つとしてレプチンシグナルの重要性を示しうるものであると考えられる。組織過形成や萎縮性など、形態変化には細胞極性のダイナミックな変動が原因の1つである。レプチンシグナルの中でAMPKは、細胞増殖、極性の変化に影響を及ぼす分子として報告されている。高脂肪食のよる胃粘膜の病態形成にAMPK の活性化を中心としたレプチンシグナルの変動を現在各種遺伝子改変マウスを用い解析を行っている最中である。
2: おおむね順調に進展している
AMPKTgマウスは作製したが、まだライン化には至っていない。その理由として、目的とするTgマウスがなかなか出産しないことが理由である。野生型およびob/ob, db/dbマウスを用いた解析は予定通り進めている。
レプチンシグナルの亢進が、消化管の中でも特に胃に顕著に影響することを見出した。今後は、消化管におけるレプチンシグナルの重要性を示すとともに、肥満で増加する食道癌や大腸癌などすでに多く報告されている消化器癌にもレプチンシグナルが深く関与するかどうか、それぞれの消化管組織の特異性にレプチンがどのような制御機構を示すのか明らかにしていきたい。
消化管におけるAMPKの細胞形態および機能に及ぼす影響について、AMPKTgマウスのライン化を進め、消化管の炎症や腫瘍など病態形成への関与についてさらに解析を進める。
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Oncogene
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