研究概要 |
研究代表者はマクロピノサイトーシスという特殊なエンドサイトーシスによる大規模な細胞膜の回収が神経突起成長円錐の退縮や神経突起伸長の抑制に必須である事を世界に先駆けて発見した。以下のように分子メカニズムと生理的役割を明らかにした。膜輸送に重要なsyntaxin-1Bを切断し、成長円錐の退縮を誘導するNeurotoxin-C1毒素が成長円錐においてvacuole形成を誘導する事が知られていた。このvacuole面積の総和は正常に突起伸長した場合の軸索表面の膜面積に匹敵することから、Neurotoxin-C1による成長円錐の退縮にvacuole形成が重要であると示唆されていたが、このvacuole形成のメカニズムは今まで全く不明であった。驚いた事に、このNeurotoxin C1によるvacuole形成はマクロピノサイトーシスによって形成され、syntaxin-1Bがマクロピノサイトーシスの負の制御因子である事を明らかにした。さらに反発性軸索誘導因子Sema3aによってsyntaxin-1B発現が低下すること、逆にsyntaxin-1Bの過剰発現によって、Sema3Aによるマクロピノサイトーシスが抑制され、成長円錐の退縮も抑制される事も明らかとなった。さらに、Sema3Aによる成長円錐の退縮はマクロピノサイトーシスの特異的阻害剤によりほぼ完全に抑制されることも明らかにした (Kabayama et al., J.Neurosci. 2011)。これはsyntaxin-1Bがマクロピノサイトーシスの負の制御因子であり、Sema3Aによるマクロピノサイトーシス依存的な成長円錐の退縮と神経突起伸長の抑制に重要な分子であることを示している。マクロピノサイトーシス阻害剤が細胞内pHを制御するNHEを標的にすることから、Sema3aシグナルの下流にプロトンシグナルが存在する可能性を示唆した。
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