研究課題
1)分子間相互作用の解析:昨年度に引き続きビアコアを用いLECT2とX蛋白質の相互作用を調べた。その過程で奇妙な現象を見つけた。相互作用によりレゾナンスシグナルが上昇するが、ある条件下ではアナライトであるX蛋白質を流し終えても上昇し続けることが判明した。その条件下塩濃度をあげて相互作用を弱める試みをしたが、低下することなくさらに上昇を続けた。2)亜鉛の含有:LECT2は、peptidase M23 familyのモチーフを持つことから亜鉛を含む可能性が考えられた。そこで、動物細胞により作製したマウスLECT2組換え体をESI-MS, XAFS解析に供したところ、亜鉛を含むことが明らかとなった。LECT2蛋白質1分子当たり亜鉛1分子を含むことが予想された。3)LECT2のオリゴマー化:昨年度に引き続きオリゴマー化の解析を行った。このオリゴマー化は、DTT, ヨード酢酸により影響を受けた。LECT2のシステインが関与し、ジスルフィド結合の形成によりオリゴマー化に寄与していることが判明した。昨年見出した亜鉛によるオリゴマー化の抑制は、カルシウム、マグネシウムでは代用できなかった。亜鉛がLECT2分子に取り込まれ構造が安定化したためと考えられた。4)シグナル伝達の解析:培養細胞に対しLECT2処理し、調整した細胞抽出液を2次元電気泳動に供し、抗リン酸化Tyr抗体によるウエスタンブロットを行った。幾つかのリン酸化蛋白質が経時的に変化することが分かった。その中にはすでに報告のあるX蛋白質を介したシグナル伝達に関わるリン酸化蛋白質が含まれることが特異的抗体を用いて明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
LECT2のオリゴマー化の解析は、LECT2とX蛋白質との相互作用を解析する上で必要と考え、昨年度に引き続き研究を継続した。その結果、極めて重要な知見が得られ論文にして発表した。そのため今年度計画していた「LECT2レセプター複合体の存在の可能性を調べる」および「X蛋白質の関与する疾患におけるLECT2の効果」は行うことが出来なかった。その他今年度に計画した項目は、計画通りに進んでいる。
LECT2のオリゴマー化は、申請時には計画していなかったが本課題を遂行する上で極めて重要な課題であったため研究を優先した。そのため申請書で計画した「X蛋白質の関与する疾患におけるLECT2の効果」は、マウスを使った実験であり、結果が得られるまで1年以上を要するため本申請の計画から除くことにした。それ以外は、申請書に記載された内容の変更はなく、計画書に従って研究を行う。
1)LECT2レセプター候補の検証:さらに様々な条件でビアコアシステムにより分子間相互作用を調べる。2)LECT2の生理活性の解析:培養細胞を使い、これまでに判明したLECT2の生理活性についてさらに詳細に調べる。3)LECT2レセプターを介した細胞内シグナル伝達系の解析:関係するリン酸化蛋白質について同定解析をする。4)LECT2レセプター複合体の存在の可能性を調べる。:LECT2とX蛋白質を用いて、第3の蛋白質の存在の検討を行う。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 備考 (1件)
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http://www.geocities.jp/lect2_yamagoe/