研究課題/領域番号 |
23590277
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
上條 義一郎 信州大学, 医学系研究科, 助教 (40372510)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 圧反射性皮膚血流調節 / 皮膚交感神経活動 / 心周期同期成分 / 暑熱負荷 |
研究概要 |
[背景]従来、ヒト皮膚交感神経活動(SSNA)には心周期に同期する成分(UA)が存在し、UAは暑熱負荷による体温上昇とともに増加し、低血液量時に皮膚血管拡張が抑制される時にUAは抑制される。この結果はUAが皮膚血管拡張神経活動であることを示唆する。しかし、SSNAのUAに同じく心周期同期性がある筋交感神経活動(MSNA)のスパイクが混入している可能性を否定できなかった。先行研究によれば、ヘッドアップ(HU)はMSNAを増加させる一方で、皮膚血流量(SkBF)は仰臥位に比べて立位で抑制される。すなわち、HUによる静脈還流量低下はMSNAを亢進させる一方で、SSNAの皮膚血管拡張神経活動を抑制する可能性がある。[仮説]ヒト暑熱負荷時において仰臥位に比べて30°HUで皮膚血管拡張反応が減弱し血圧が上昇する時、SSNAのUAは低下するがMSNAのUAは亢進する。[方法]健康な若年男性にサーマルスーツを着用させ仰臥位を取らせた。スーツには始め34℃の水を流し(中性温域)、仰臥位と30°HUにおいて、MSNA(左腓骨神経)、SSNA(右腓骨神経)、平均血圧(MAP; 左前脛骨動脈)、SkBF(laser-Doppler法; 右足背部)を測定した。その後、スーツに47℃の水を流して食道温が0.5℃上昇した後、同様の測定を行った。[結果]中性温域・暑熱負荷時ともに皮膚血管コンダクタンス(CVC=SkBF/MAP)は仰臥位に比べて30°HU時に低下し、SSNAのUAは暑熱負荷時において30°HUにより低下した。MAP とMSNAのUAは共に中性温域・暑熱負荷時において仰臥位に比べて30˚HU時に上昇した。[結論]SSNAのUAにはMSNAのスパイクが混入しておらず、この成分が皮膚血管拡張神経活動である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画は、平成23年度には実験プロトコールと測定方法・手技の確立とデータ収録・解析を行うことであった。 被験者に与える負荷として、当初は陰圧呼吸法とバルサルバ手法を行う予定であったが、30°ヘッドアップに変更した。それ以外は計画通りにプロトコールを決定した。当大学医学部・医倫理委員会の承認を得た。 さらに、以下の手技の確認をした。(1) 30°ヘッドアップ: ティルトテーブルを用いた。 (2) 右心房容積測定(超音波ドップラー・エコー): 拡張・収縮期の右心房容積をmodified Simpson法により算出し、その差から1回心拍出量を求めた。1回心拍出量が臥位に比べてヘッドアップ時に低下することを確認した。 (3) 皮膚(SSNA)・筋交感神経活動(MSNA): SSNAバーストはArousal stimulationによりバーストが誘発され、Valsalva手技によりこれが誘発されないこと、MSNAバーストはValsalva手技によりバーストが誘発されArousal stimulationによりこれが誘発されないことを確認した。整流・積分化されたSSNA・MSNA信号はサンプリング周波数200Hzで上記A/Dコンバーターを介して記録し、それぞれの原波形はDAT recorderにより記録した。 (4)心電図(第II誘導): 生体アンプを通した信号はサンプリング周波数200Hzで上記A/Dコンバーターを介して記録されると同時に、交感神経活動の原波形と共に上記DAT recorderにも記録した。 (5)動脈圧: 左撓骨動脈において非観血的連続的に測定した。(6)皮膚血流量: 右足背部(腓骨神経支配領域内)においてレーザー血流計により測定した。 (7)発汗率: 皮膚血流測定部位近傍において、カプセル換気法により測定した。 (8)食道温・平均皮膚温: 銅-コンスタンタン熱電対を用いた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、健常な若年男性を10名程度募集しデータ収録を行う。 また、交感神経活動のスパイク解析のために、まず実験終了後にDATテープを再生し、サンプリング周波数20kHzでSSNA・MSNAの原波形と心電図の信号を上記のA/Dコンバーターを用いて記録する。20kHzのデータをプログラミングソフトウェア(MATLAB; MathWorks)を用いて申請者らが開発したコンピューター・プログラムにより解析を行なう。 さらに、得られた成果をまとめて国内外の学会で発表する。さらに社会に広く発信するために、論文を執筆し英文専門誌に掲載させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画に盛り込んでいた備品の購入を見合わせたために、次年度使用額が生じた。 次年度見込まれる研究費の使用は以下のとおりである。(1)被験者謝金: 15000円 x 10名 = 150000円 (2)解析ソフトウエア更新料: 50000円 (3)物品費: 500000円 (4)旅費: 150000円 (5)論文校正など: 100000円
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