研究課題/領域番号 |
23590277
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
上條 義一郎 信州大学, 医学系研究科, 講師 (40372510)
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キーワード | 皮膚交感神経活動・心周期同期成分 / 圧受容器反射 / 高体温 / 静脈還流量 |
研究概要 |
背景:我々は皮膚交感神経活動(SSNA)の心周期同期成分(UA)が能動性皮膚血管拡張神経活動であることを報告した。しかし、SSNA・UAに同じく心周期同期性がある筋交感神経活動(MSNA)のスパイクが混入している可能性を否定できなかった。先行研究によればヘッドアップティルト(HUT)はMSNAを増加させる一方で、皮膚血流量(SkBF)を仰臥位に比べて抑制すること、さらにSSNA・UAとMSNAがそれぞれ心房の伸展と頸動脈洞の脱伸展により惹き起こされているのであれば、SSNA・UAとMSNAの発火パターンが異なることが予想された。 目的:ヒト高体温時において、臥位から30°HUTに姿勢変換した際のSSNAとMSNAの同時連続測定を行い、ヒト高体温時におけるSSNA・UAとMSNAを分離することである。 [方法] 12名の健常男性被験者(22-42歳)に環流スーツを着用させ、34℃の水を流しながら水平臥位とHUTにおいて、食道温、右心房容量と頸動脈径(超音波ドップラー法;N=6)、SSNAとMSNA(腓骨神経;微小針電極法;N=6)を測定した。次に47℃の水を流して食道温を0.7℃上昇させた後に同様の測定を行った。 結果:暑熱負荷時において、HUTは右心房を脱伸展させ(P<0.05)、その結果SSNA・UAも減弱させた(P<0.05)。一方、HUTは頸動脈洞を脱伸展させ(P<0.05)、MSNA・UAを亢進させた(P<0.05)。R波からのSSNA・UAの発火の潜時は1.1秒とMSNAの1.2秒より短かった(P<0.05)。 結論:SSNA・UAをMSNAから分離することに成功した。これらの結果はSSNA・UAが能動性皮膚血管拡張神経であるという我々の考えを支持する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロトコールの変更を行った後(陰圧呼吸とバルサルバ手法→ヘッドアップティルト)、被験者12名で測定を行い、皮膚・筋交感神経活動の同時測定に成功したのが、6名であった。その成果は、本年度の米国生理学会(Experimental Biology 2013)で発表することができた。あとは、必要があれば被験者を追加し、論文を執筆する段階まで来ているので、おおむね順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1)2~3名の被験者の追加。 2)論文の執筆、投稿。 3)皮膚交感神経活動・心周期非同期成分にも、皮膚血管拡張に関与する成分が含まれている可能性を否定できない。したがって、皮膚交感神経活動の活動電位の解析を行い、皮膚血管拡張に関与する活動電位の同定を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画で見込んだよりも安価に研究が完了したため、次年度使用額が生じた。 平成25年度は、未使用額と合わせて下記の通り研究費を使用する: 1)被験者を追加する際にかかる消耗品、被験者への謝金など。 2)論文執筆・投稿にかかる費用。 3)学会発表や研究を進めていくために他の研究者との話し合いを持つための旅費。 4)活動電位の解析に必要なソフトウエアの購入。
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