研究課題/領域番号 |
23590278
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
紫藤 治 島根大学, 医学部, 教授 (40175386)
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研究分担者 |
松崎 健太郎 島根大学, 医学部, 助教 (90457185)
片倉 賢紀 島根大学, 医学部, 助教 (40383179)
橋本 道男 島根大学, 医学部, 准教授 (70112133)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 暑熱曝露 / 暑熱馴化 / 唾液腺 / アクアポリン / ドライマウス |
研究概要 |
本年度は研究計画に添い、暑熱に曝露したラットの唾液腺におけるアクアポリン(AQP)の発現量の変化と唾液腺組織における局在を検討した。ウィスタ-系雄ラットを環境温24℃、明暗周期 12:12時間、自由摂食・摂水下、プラスチックケージで飼育し、1週間飼育環境へ慣らした後、暑熱馴化ラットは32℃の高温環境で飼育し、対照ラットは24℃の一定環境温下で飼育した。暑熱曝露開始から2、5、40日後、ラットをペントバルビタールにて麻酔し、顎下腺を摘出した。暑熱馴化ラットと対照ラットそれぞれにおいて、 顎下腺からmRNAとタンパク質を回収し、唾液腺に発現していることが知られるAQPのタイプおよび可能性のあるタイプとしてAQP1、3、4、5、6、8、9のmRNA発現量および蛋白量をそれぞれリアルタイムPCR法とウエスタンブロット法で解析した。さらに、顎下腺のパラフィン包埋切片を作成し、暑熱馴化により強発現したAQPのそれぞれについて免疫組織化学的に染色し、暑熱馴化によりどのタイプのAQPがどこに局在するか解析した。2日間の暑熱曝露により、AQP1と5のmRNA発現量が有意に増加した。AQP3、4、6、9のmRNAは対照ラットおよび暑熱馴化ラットでは発現しなかった。AQP8のmRNAは量群で発現したが、発現量に差は無かった。AQP1と8の蛋白量は2日および5日の暑熱曝露により有意に増加した。暑熱曝露によりAQP5は顎下腺の漿液腺の腺房細胞の管腔側に強発現したが、粘液腺には発現しなかった。AQP1は血管内皮細胞に強く発現した。AQPの誘導にはVEGF、HIF-1αが関与する可能性が示唆された。また、40日間の暑熱曝露後にはAQPの強発現はなかった。短期の暑熱曝露により血管にはAQP1が漿液腺の腺房細胞にはAQP5が誘導されることにより、唾液腺分泌量が増加する可能性が強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究計画に基づき、主な研究テーマである暑熱曝露による唾液腺におけるAQPの誘導と局在を検討できた。さらに、AQPの細胞膜への移動の分子メカニズムを転写因子のGATA-6、AQP5およびAQP2発現や細胞膜移動に関与するとされるHeat shock protein 27(HSP27)やHSP70を解析した(結果が明確でないため実績には記載していない)。さらに、研究計画を超えてAQPの誘導メカニズムをVEGF、HIF-1αを中心に検討した。本年度はAQPに特化したため暑熱曝露によるTRPV1の誘導については検討しなかったが、それに代えAQPの誘導分子メカニズムの実験を加えた。さらに、共同研究により培養細胞への暑熱曝露によるAQPの誘導の研究を行った(結果は不記載)。これらから、自己点検区分では(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度(平成24年度)は当初の実験計画に添い、暑熱馴化による唾液分泌亢進が、唾液腺に対する直接の温度刺激(顎下腺自体の温度上昇)であるか、皮膚からの温度入力に起因する体温調節中枢を介した体温調節性の二次性の結果であるかをアセチルコリンのアゴニストを用いて検討する。また、直接の温熱刺激がAQP誘導に有効である結果が得られれば唾液腺におけるTRPの発現について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は当初の計画どおり、ほとんどを消耗品に使用する。なお、これまでの研究結果は2012年にブラジルで開催される国際温熱生理学会において発表の予定であった。しかし、本研究の申請を行った際にはその日程は流動的で、実際は平成24年3月末(平成23年度)に開催された。このため計上した外国旅費は平成24年度の他の学会への旅費として使用する予定としている。
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