研究課題/領域番号 |
23590280
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
大塚 曜一郎 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (70302403)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交流(オーストラリア) |
研究概要 |
ラットにおいて体温、褐色脂肪組織温、心拍数、活動量が覚醒レベルの増加を伴って一過性に増加することが報告されている。この一過性の増加は約100分周期であり、超日生体リズムと呼ばれている。これらは全て同期していることから、反射などの単なる二次的変動ではなく、中枢で作られる合目的な生体リズムと考えられる。しかしながら、超日生体リズム形成に関わる中枢神経機構は不明である。そこで本研究の目的は、‘超日リズム’の脳内発生機構を解明することである。具体的には、覚醒・睡眠制御系で重要な役割をもつ脳内オレキシン神経が、‘超日リズム’形成にも関与している可能性を、遺伝子改変マウスを用いて検討することである。平成23年度は野生型マウスで体温、心拍数および行動に同期した一過性の増加が見られ、その間隔は平均90分であり、マウスでもラットと同様な‘超日リズム’が存在することが明らかとなった。 褐色脂肪組織温度、脳波、摂食を同時に記録したマウスでは、超日リズムの一過性増加時には覚醒レベルの増加が先行して生じ、それに続いて熱産生、心拍数増加、体温上昇が生じていることがわかった。これは「超日リズムが脳内で生じ、セントラルコマンドとして自律神経パラメータや行動など引き起こす」という申請者の仮説を強く支持する。オレキシン・ノックアウトマウスでは体温と活動の‘超日リズム’が減弱していることが明らかとなった。以上の結果は脳内オレキシン神経が体温と活動の‘超日リズム’の発現に重要な役割を果たしていることを示唆する。これまでの研究成果は国内外の種々の学会で発表した(国際自律神経科学学会、国際シンポジウム「行動神経科学の最前線」、西日本生理学会大会、日本生理学会大会、自律神経研究会、九州脳と高血圧研究会)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の計画は1)野生型マウスでの褐色脂肪組織温度計測の確立、2)オレキシン・ノックアウトマウスの超日リズムの解析の2つであった。野生型マウスで褐色脂肪組織温度計測に成功し、脳波と同時した記録では、申請者のラットでの結果と同様、褐色脂肪組織の温度上昇、すわなち熱産生より5-6分先行して覚醒レベルが増加することが示された。また、ノックアウトマウスでの種々の生理パラメータでの記録にも成功し、脳内オレキシン神経が体温と活動の‘超日リズム’の発現に重要な役割を果たしていることを示唆するデータが得られた。以上のことから、研究は計画通り順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初の計画通り、オレキシン神経細胞破壊トランスジェニックマウスの超日リズムの解析をおこなう。また当初の計画から発展させ、オレキシン神経細胞破壊トランスジェニックラットの超日リズムの解析もおこなう。そのために、このトランスジェニックラットを有するオーストラリアのフリンダース大学のBlessing教授との共同研究を計画している。さらに、連携研究者である山中章弘准教授からオレキシン神経特異的に光受容タンパク質を発現したマウスの供与を受け、光操作によるオレキシン神経活動の制御の実験を開始する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年3月29日から開催された学会に出席したが旅行日程の都合上復路が4月1日となった。そのため、その旅費は平成24年度予算から支払われることとなり、当初予定していた平成23年度この学会出席旅費は未使用となり次年度に繰り越しとなった。したがって平成24年度の研究費は主に、1)オレキシン神経細胞破壊トランスジェニックマウス、光受容タンパク質を発現したマウスの系統維持の費用、2)光刺激装置を購入費、3)トランスジェニックラットを用いたフリンダース大学のBlessing教授との共同研究のために、渡豪する旅費、4)学会参加費に加え平成24年度払いとなった学会旅費となる予定である。
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