研究課題
研究最終年度は、がん悪液質の中枢性体液調節機構に影響を与える因子の検討を引き続き行った。これまで、がんの転移などに関連するキスぺプチンに焦点を当て、キスぺプチンが水分調節を主に司るバゾプレッシンの分泌動態にどのような機序で影響を与えるのか検討し、正常ラット脳スライス標本にホールセルパッチクランプ法を用いて、電気生理学的に解析を行い、キスぺプチンがキスぺプチン受容体(Kiss1r)を介して、濃度依存性に興奮性シナプス入力を頻度を増加させることを解明してきた。25年度はさらに細胞内情報伝達系まで詳しく検討を行った。キスぺプチンによる興奮性シナプス入力増強は、PKC阻害薬前投与で減弱したことから、キスぺプチンはKiss1r-PLC-DAG-PKCを介して、プレシナプスに作用して興奮性シナプス入力を増強させることで体液調節に関与する可能性が示唆された。がん悪液質モデルラットを用いた検討も継続して実施した。がん悪液質モデルラットでは、体重増加、摂食量、飲水量が正常ラットに比べて有意に減少し、摂食を促進するペプチドであるグレリンへの反応性が低下していることが、行動生理学的検討で明らかとなった。がん悪液質モデルラットの脳スライスを用いたバゾプレッシン産生細胞に対する電気生理学的検討においても、正常ラットで興奮性シナプス入力を増強させる濃度のグレリンを投与しても反応は鈍く、グレリンへの反応性が正常とは異なることが示唆された。がん治療に用いる、鎮痛薬や麻酔薬の作用についても継続的に検討を行った。今年度は、吸入麻酔薬のセボフルレンの体液調節機構に与える影響をラット脳スライス標本を用いてパッチクランプ法にて検討した。この結果、セボフルレンは抑制性シナプス入力に作用することが示唆された。これらの結果は、これまで報告されたことがなく、がん悪液質状態の改善に向けて更なる発展が期待できる。
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